研究課題/領域番号 |
23653093
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
関口 倫紀 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (20373110)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 企業経営 / 流行現象 / 普及・浸透プロセス / 制度化 / 同型化 |
研究概要 |
マネジメントファッションとは、新規性の高い経営手法が、その効果を真に吟味されないままにブームとなって産業界に急速に普及・浸透し、ピーク期を迎えた後に関心が衰退してブームの終焉をむかえるという一種の流行現象を指す。本研究課題の目的は、さまざまな研究分野の理論枠組みを統合するとともに、わが国で見られる特定のマネジメントファッション現象を詳細に分析することによって、マネジメントファッションの生起,普及・浸透および終焉のメカニズムを明らかにすることである。本研究課題の初年度であった平成23年度は、マネジメントファッション現象に関する理論構築のための関連文献のサーベイと整理を行うとともに、次年度以降の本格的な実証研究の実施に向けた予備調査を行った。文献サーベイについては、わが国における経営管理および人事管理の特徴が、歴史的にみていかなるかたちで発展してきたかについての文献、および以下に示す予備調査内容の主たる対象となる経営現象を深く理解するための文献の探索および収集を行ってきた。予備調査については、近年、マネジメント・ファッション化しつつある現象の具体的事例として、(1)ソーシャル・ネットワーキング・サービスおよびモバイル・テクノロジーの働く人々への普及と、それに対するマネジメントの対応に関する実態把握、およびワーク・ライフ・バランスおよび従業員の精神的健康を重視する経営手法の生起および普及に関する実態把握のため、インターネットを用いたオンライン・サーベイを複数回実施し、今後の詳細な分析に利用するデータを収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題において計画した通り、平成23年度は、マネジメントファッション現象に関する理論構築のための関連文献のサーベイおよび整理と、次年度以降の本格的な実証研究の実施に向けた予備調査の両方を実施することができた。理論構築面に関しては、特定のマネジメント・ファッション現象についての歴史的推移の理解を可能にする文献の渉猟につとめることによって、次年度以降の理論構築作業に役立つ文献蓄積を進めつつある。実証研究面については、今年度にすでに、マネジメント・ファッション現象の具体的事例となりうる複数のトピックスについて、複数のオンライン・サーベイを実施することができたことから、次年度以降、これらのデータを分析して理論枠組みの検討を行うとともに、新たなサーベイを実施していくためのノウハウの蓄積も達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進においては、今年度と同じく、理論構築面および実証研究面の両方から、マネジメントファッションの生起,普及・浸透および終焉のメカニズムを明らかにするための理論的枠組みの構築を進め、かつ、マネジメントファッションと企業業績との関係についての理解も進めていく。理論構築については、ファッション性のある事象の制度化や組織の同型化を説明する新制度派組織理論、ネットワーク理論などのマクロ組織論や、マネジメント・ファッションの生起に関連する創造性、アントレプレナーシップ、イノベーションなどに関する理論、流行現象に焦点をあてたマーケティング的視点、マネジメント・ファッションを取り巻く組織や人々の感情的側面に着目する心理学的視点、さらには、マネジメント・ファッションの普及や流れといった変化に着目する東洋思想、中国哲学など、経営学以外の多様な分野の知見を取り入れながら、学際的なマネジメント・ファッションの理論を構築し、論文としてまとめていく。実証研究面においては、今年度すでに、モバイルテクノロジーやソーシャル・ネットワーキング・サービスなどファッション性の高いトピックスについてのサーベイを実施したが、その他にも、人事制度における成果主義やワーク・ライフ・バランス、経営のグローバル化や合併、買収、企業提携など、マネジメント・ファッションの事例となりうるトピックスを探索し、それらに対する実証研究も行っていく。その際、研究方法としても、サーベイのみならず、アーカイバル研究やインタビュー調査も取り混ぜながら、多角的視点からの分析が可能になるようなデータセットを構築していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したところ当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。そのうえで平成24年度については、前年度に引き続き、マネジメントファッション現象に関する統合的な理論構築を進めるとともに、わが国における具体的事例に関する本格的な実証研究を実施する。理論構築面に関しては、これまで収集した文献に加え、新たにマネジメント・ファッショントレンドの時系列推移のための文献を収集し、さらに、マネジメント・ファッションを理解するのに役立つ基本情報データベースの作成も実施する。したがって、書籍代、資料代や、データベース構築費用などが発生する予定である。実証研究面においては、特定のマネジメントファッション分野に焦点をあてた大規模サーベイを実施するとともに、アーカイブデータなどを用いて、時系列にトレンドを把握し、分析するためのデータ構築を進めていく。そのため、調査にかかる質問紙作成や、質問紙の配布、回収、その他のデータ取得関連費用が発生する予定である。さらに、本研究課題によって得られた中間的な成果を国内外の場において発表するための旅費、およびインタビュー調査などにかかる出張費用、そして、資料やデータの整備や分析にかかるアルバイト費用などの人件費が発生する予定である。
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