研究課題/領域番号 |
23653096
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
内田 交謹 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (80305820)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 年金資産 / 退職給付債務 / 企業価値 / リスク / ベータ |
研究概要 |
研究初年度である平成23年度は、日本企業の年金債務が経営者行動、企業価値・リスクに与える影響を分析する準備として、(1)先行研究サーベイ、(2)退職給付債務制度の詳細および実態調査、(3)当該分野の研究者との情報交換、(4)平成24年度に予定している実証分析のためのデータベース構築を計画していた。 (1)については、主に退職給付債務が企業価値や株式のリスクに与える影響についての先端研究を調査し、(2)については、公認会計士・経営コンサルタントへのインタビュー調査を4回行った。(3)については、9月に City University of Hong Kong の Yuanto Kusnadi 氏を招聘し、企業債務が企業価値、企業行動に与える影響について、互いの研究成果を議論する機会を持った。 (4)については、個別企業レベルの退職給付債務データを収集し、株価データ(Nikkei NEEDS Portfolio Master)、財務データを結合する作業を行った。このデータをもとに、個別企業の年金資産のリスク・リターンを推定する手法を公認会計士、経営コンサルタントと共同で構築した。さらにこの推定データを用いて、年金資産・債務が企業価値や株式のリスクに与える影響について、予備的な分析を行った。また、個別企業の投資・リストラクチャリング・データを収録したNIKKEI JCWデータを購入し、年金債務の存在が実際に企業行動に影響するかを分析する準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年金債務が株価・リスクに与える影響に関して、先端研究のフォローを予定通り終えた。公認会計士・経営コンサルタントへのインタビュー調査を通じて、退職給付制度の概要や企業経営者の意識、対応についての情報を予定通り収集できた。個別企業の詳細な年金資産・債務データ、投資・リストラクチャリング・データを収集し、株価データや財務データと結合することで、実証分析の準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は本格的な実証分析を行い、ワーキング・ペーパーを執筆する予定である。標記テーマに関心のある大学院生を研究補助として雇用することで、作業を効率化できると考えている。また、引き続き実務家インタビューを行うことで、退職給付債務データの扱いや退職給付債務のリスクについてアドバイスを受ける。国内外での研究発表や海外の研究者招聘を通じて、分析手法を精緻化し、貢献度の高い論文執筆を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
実務家インタビューを2回予定しており、そのために旅費を使用する。基礎的な分析及び図表の作成のために大学院生をアルバイト雇用するため、謝金の支払いを予定している。国内外での学会・研究会発表、海外研究者招聘のために、旅費を使用する。
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