研究課題/領域番号 |
23653109
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
渡邉 光一 関東学院大学, 経済学部, 教授 (30329205)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 生活物語 / 状態遷移 / コンセプト / AIDMA |
研究概要 |
従来のマーケティングや社会科学全般の方法論の課題を考える上で興味深い先行研究が散見する。たとえば、人がある価値観を受け入れる入信・回心のプロセスを説明する古典的な理論モデルであるLSモデル(Lofrand & Stark)は、消費者がある商品のコンセプトを受け入れるプロセスを説明する古典的なAIDMA・AIDA・AIDCAなどのあるいは近年のAISAS(電通)・AIDEES(片平)などの理論モデルと近似するものであるが、態度変容により特化している点が長所となる。しかし、状態記述要素がステップ(状態)として混在しているなど状態遷移を適切にモデル化しない短所もある。これら長所・短所は、マーケティング分析においても共通するものであり、そこでの課題を明確化することがより有益な方法論の開発につながる。また、自然言語で述べられた個人史(つまり生活物語)を分析するライフヒストリー法(Bertaux、Langness/Frank、中野/桜井など)が1980年代から盛んに利用されている。その分析方法は、質的データ分析によくあるようにブラックボックス化しており、恣意的・主観的であることが批判されている。一方で、語り口の変化、登場人物間の出現頻度差、ミメーシス(模倣)性など、分析上の注目点・経験則が研究されており、生活物語の状態遷移の定式化・構造化に利用できる。そのようなことを踏まえて分析方法を検討し、その生活物語の構造抽出のための基礎データ(予備調査でのごく少数の第1回サンプリング)を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予備調査での第1回サンプリングにより、最初の基礎データを首尾よく収集したので、今年度はそれを分析し、さらに研究を進捗できる。
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今後の研究の推進方策 |
状態遷移の定式化は状態の構成要素の組合せとなるため、単純に数学的に考えれば組合せ爆発的な数の定式化候補が存在する。上述のような先行研究の注目点・経験則を踏まえて、その中から合理的な状態遷移の定式化を想定しているのだが、当初は慎重に小サンプルで試行錯誤を重ね、その可否を検討・洗練していくことが望ましい。そのため、今後に試行錯誤を重ねることも想定し、2011年度は当初予定よりサンプル数を控え、予算を当初予定より控えめに執行して、予備調査でのごく少数の第1回サンプリングを行なった。この第1回サンプリングの最初の基礎データを分析することで、構造を構成する組み合わせ空間の中で探索すべき部位を同定する。それを踏まえて、第2回サンプル以降の消費者の基礎データやその他のデータを更に収集し、モデルを精緻化していく。例えば、静的な従来の数理モデル手法に時系列の因果関係を導入することを図ることが考えられる。通常の構造方程式モデルは変数ノード間リンクに偏回帰係数を付加した超時間的なものであるが、複数の状態モデルに切り分けることで、生活物語のダイナミズムを反映し、差異を的確に表現できると期待できる。その他にも、有益なモデルやその構成要素の可能性を繰り返し検討していく。また、学会で発表し学界の他研究者の意見を求め、また実務家からもインタビューなどで意見を求めることで、かかるモデルの精緻化に資する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記のように進めるため、データ収集と学界発表とインタビューに研究費を用いる。すなわち、以下の3点が主となる。(1)第2回サンプル以降の消費者の基礎データを更に収集していくために、調査費用が必要である。(2)学会で他研究者の意見を求めたり情報を収集するため、大会登録費や出張費などが必要である。(3)実務家からのインタビューのための調査費用が必要である。
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