本研究は、生活者の商品利用に関する因果判断を具体的に説明する物語(以下、生活物語)を、世界標準技術のUMLを用いて、自然言語の柔軟さ・具体性と数理モデルの厳密さ・普遍性を併せ持つ構造化物語データにより表現し、「定性分析と定量分析」「研究と実務」「調査と広告」の間をよりシステマチックに連携させるためのものである。 状態遷移とは状態から状態への遷移であり、因果関係とは時系列の状態遷移の一部であり、因果判断とは因果関係を状態遷移により判断することであり、生活物語とは具体的事物を状態遷移に追加したものであると定式化できる。よって生活物語を適切に収集するためには、構造化されかつ具体性を有する調査方法論が必要である。その確立のため、前年度までは、予備調査を数度にわたり行ない、その結果データへの分析・構造化と調査方法に関して、マーケティティング・コンピユータサイエンスのみならず、社会調査法や社会学の専門家にもヒヤリングを重ね、検討してきた。 その結果、多様なUMLダイヤグラムの中でも2~3種類に絞れば、充分な表現力のモデルを構築できることが分かった。また、生活物語のモデルを活用する上では、UMLのダイヤグラムをICTリテラシーを有さない一般の調査回答者に直接提示するよりも、そのモデル構造に基づいてアンケート・インタビューシートを設計し、それを用いてデータを収集する方が有効であることが分かった。この試行錯誤のために、当初より調査方法論の設計に時間がかかり、本調査の実施が後ろ倒しとなったが、社会調査法でいう(半)構造インタビューをICTによりよりシステマチックに改良した方法論が得られた。 このようにしてモデル・方法論が策定されたので、今年度は、その定式化をふまえて消費生活の状態遷移に関連する調査項目を設計し、2種類の本調査を実施し、十分な量のデータを収集することができた。今後その分析結果を発表していく予定である。
|