研究課題/領域番号 |
23653123
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山田 勅之 神戸大学, その他の研究科, 研究員 (40582995)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 観光 / 民族問題 |
研究概要 |
本研究の目的は中国少数民族地域のうち、チベット自治区、新疆ウイグル自治区、内モンゴル自治区を対象に、観光産業発展の動態を明らかにし、発展の恩恵の行方と民族問題の関連を検討することにある。 平成23年度においては、8月24日~9月24日にかけてチベット自治区及び関連地域(カトマンズ、成都)で調査をし、また2月8~29日にかけて新疆ウイグル自治区にて調査を実施した。それぞれにおいて、旅行会社、ホテル、土産屋、観光スポットを調査対象とした。調査の成果を2点挙げてみたい。まずラサで売られている物品のうち、仏像のほとんどはネパールから仕入れられ、また、カターと呼ばれる白いスカーフは成都で生産されていることが明らかになった。そこでそれらにも足を伸ばした結果、仏像は必ずしもチベット族商人のみが仕入れているわけではなく、漢族商人も担っており、カターは生産・仕入・販売のほぼ全てを成都の漢族商人が担っていることが判明した。 第2点として、ラサでは旅行会社、ホテルなどの経営者には確かに漢族出身者が多いが、その実情は独占的というわけではなく、チベット族経営者も相当数存在することがわかった。また、小規模な土産屋の経営者はチベット族が大多数であるが、彼らの出身地はラサや他のチベット自治区の地域よりも、四川や甘粛、青海の方が多く、ラサがチベット族にとって出稼ぎの目的地の一つになっている現状が見える。一方、新疆においては旅行会社、ホテルの状況はチベットよりも漢族の割合が多く、土産屋もたとえばホータンの玉石屋のほとんどは漢族経営者で、ウイグル族は自民族の伝統的商品を扱う店に限られる傾向にあるが、カシュガル、ホータンでは出稼ぎ者が観光業に従事する事例は多くなかった。 なお、研究発表は雑誌2編、発表1回を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
旅行会社、ホテル、土産物屋、観光スポットに対する調査の手法として、アンケート調査を予定していたが、ラサでは2008年3月のラサ騒動により、また新疆ウイグル自治区では、2009年のウルムチでの騒動や各地(カシュガル、ホータン)の騒乱事件の影響により、町中に公安や武装警察が配備され、アンケート調査は困難な面が多かった。代替として聞き取り調査を実施しその不足を補った。 「研究実績の概要」で述べたとおり、カトマンズと成都にも調査範囲を広げた結果、より重層的な実情の把握をすることが出来た。以上2点を中止に、全体として「おおむね順調に進展している」と評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度夏季には、新疆ウイグル自治区にて、繁忙期における旅行会社、ホテル、土産屋、観光スポットの調査を実施する。調査には、新疆大学旅游学院の研究者や新疆ウイグル自治区旅遊局の協力を得ながら実施する。また冬には内モンゴル自治区にて、同様に調査を実施する。内蒙古大学の研究者や内蒙古自治区旅游局の協力を得ながら実施する。このように現地関係機関と協力することにより、より一層確実性を増幅させたい。 さらに得られた調査データを整理し、チベット、新疆、モンゴル3自治区の実情を比較分析し、報告書作成につなげていきたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
上述の通り、平成24年度では、新疆と内モンゴルにて調査を実施するので、調査旅費が必要となる。また、関連の書籍、画像・音声記録の記憶媒体などの購入が必要となる。 国内での学会発表を2回計画している。そのための出張旅費が必要となる。
|