研究実績の概要 |
地方選挙、国政選挙を問わずに高齢者層の投票参加率は他の年齢層に比べて高い。少子・高齢化の進行は、そうした高齢者層が有権者に占める割合を急速に増大させており、高齢者層の投票行動が政治や社会に与える影響に関心が高まっている。この研究では、無作為に抽出された兵庫県内在住の成人男女4,000人を対象とする郵送調査から得られた1,474票のデータを用いて高齢者の政治参加活動と世代間対立を分析した。 政治参加活動の中でも最も一般的な「投票参加」では、高齢世代であることが他の要因よりも強く作用している。中年世代であることや社会経済的地位がそれらに次ぐ効果を示している。そして、内的有効性感覚も投票参加に促進的に作用しており、いずれの要因に関しても政治的有効性感覚の間接効果(媒介的効果)が認められる。その効果は大きいものではないが、高齢世代の内的有効性感覚を介しての間接的効果は他の要因に比べて大きい。この結果は、高齢世代の高い投票率に政治的有効性感覚の高さが反映されていることをあらためて示唆していると言える。 若年世代向け教育関係予算、若年世代向け就労関係予算、高齢世代向け予算のそれぞれに対する態度には、性や社会経済的な要因が複雑に関連しあいながら作用していて、世代が単独で強い影響を与えているということはないことが明らかになった。このことは、年齢階層で一括りされた若年世代や高齢世代という集団それ自体が相互に対立的と言えるほど自世代利益志向的な態度を持っているわけではないことを示していると言える。本研究での分析結果は、各世代に属する個人が、そうしたことを意識しているかいないかは定かではないが、自世代利益志向からではなく、現在の日本における政策課題が何であり、それらに対応するためにはどのような政策に予算を増額あるいは減額すべきか脱世代的な観点から判断を下していることを示していると言えよう。
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