研究課題/領域番号 |
23653126
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
鈴木 啓之 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (20206527)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 防災 / 地震 / 津波 / 土砂崩れ / 自主防災組織 / 集落機能 / 過疎 / 高齢化 |
研究概要 |
申請者は、本補助金交付申請以前に高知県幡多郡黒潮町において、集落機能について同町大方地区の約半数の区長を中心に聞き取り調査を行い、その際に消防団および自主防災組織の実情等についての把握を行ってきた。その際、過疎と高齢化に伴い、消防団の複数地区での合併や最年少団員が50歳代になっている集落の増加、会合や住民の多くが参加する避難訓練等が不開催となっている自主防災組織がかなりの数にのぼっていることなどを確認した。 このような前提を基に、平成23年度には、同町において聞き取り調査を軸として、防災体制について予備的調査を行うこととしていた。しかし、平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震の発生後、「津波てんでんこ」をはじめとして、住民が自ら自分の命を守ること、自主的に避難することを集落単位で考えることなどの重要性が明らかとなり、研究期間開始後の同町役場との打合せや、平成24年度に調査を予定していた四万十町役場との打合せの中でも、住民自身に考えてもらう機会の創出が課題であるとの認識で一致し、住民ワークショップ等を組み込んだ調査・研究計画の再編成を行うことが必要となった。 また、東北地方太平洋沖地震の発生後、東北地域への支援や、東海・東南海・南海地震の予測の度重なる修正とそれに伴うハザードマップの修正などもあり、腰を据えてワークショップや聞き取り調査を進める体制が取りづらい状況が発生した。このため、実施内容、ワークショップや調査の内容検討および対象地域の選定等に関して打合せを進めることはできたものの、実施については平成24年度に繰り延べざるを得なくなった。 現段階では、集落毎の避難体制の確立のために行う予定のワークショップ内容案と、聞き取り調査のための調査票の素案について、意見交換を継続している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画においては、平成23年度には、黒潮町において聞き取りを中心とした予備調査を行う予定であった。しかし、平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震の発生後、「津波てんでんこ」をはじめとして、住民が自ら自分の命を守ること、自主的に避難することを集落単位で考えることなどの重要性が明らかとなり、研究期間開始後の同町役場との打合せや、平成24年度に調査を予定していた四万十町役場との打合せの中でも、住民自身に考えてもらう機会の創出が課題であるとの認識で一致し、住民ワークショップ等を組み込んだ調査・研究計画の再編成を行うことが必要となった。 そのため、後の打合せ等では、危険度の高い地域と比較的安全と思われる地域の両方について、自律避難や地区を越えた相互扶助などの観点を交えて、どのようなワークショップを行うかなどを中心に、研究計画の再編成のための打合せを重ねることとなった。 また、東北地方太平洋沖地震の発生後、東北地域への支援や、東海・東南海・南海地震の予測の度重なる修正とそれに伴うハザードマップの修正などもあり、役場サイドでも腰を据えてワークショップや聞き取り調査を進める体制が取りづらい状況が発生した。このため、実施内容、ワークショップや調査の内容検討および対象地域の選定等に関して打合せを進めることはできたものの、実施については平成24年度に繰り延べざるを得なくなった。 住民対象の予備調査に踏み込めなかったという意味でやや送れていると評価したが、研究の有効性を高めるための計画の見直しができた点は有意義である。
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今後の研究の推進方策 |
すでに、黒潮町および四万十町では、今回の調査に関して打合せと内容に関する意見交換を進めてきており、実施のための詳細な計画や内容の打合せの段階に来ている。当初の聞き取り調査主体の計画を修正したため、まず各町村でモデル地区を選定した上で住民ワークショップを実施し、その後、それを踏まえた上で調査票を修正し、聞き取り調査を行うこととしている。本報告時点では、当該モデル地区の選定やスケジューリングが当面の課題となっている。 ワークショップについては、住民自身に避難および避難所生活に関するシミュレートを想定しているが、その際の学生ファシリテータの養成を進めているところである。この場合のファシリテータは、ファシリテーションの一般的知識だけではなく、避難や避難所生活に関して議論しておくべきポイントを知っている必要があるため、現在、防災・減災に関する学習の他、避難および避難所生活に関するワークショップを実際に経験する形で、準備を進めている。 今後、両町役場との調整を踏まえて、早期にワークショップを実施し、その上で、その結果を踏まえた調査票を作成し、後半期には聞き取り調査等を行う予定である。また、平成24年度は、当初計画で2町村で調査を実施する予定であったことから、上記の両町以外に一自治体(馬路村等を想定)に早期に打診を行い、ワークショップと聞き取り調査の実施にこぎ着けたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は、直接経費全額を繰り越すこととなった。これは、主として(1)住民ワークショップを組み込んだ計画への再編成を行うこととなったこと、(2)そのため地域選定・事前打ち合わせ等が改めて必要となり、ワークショップおよび聞き取り調査の準備を完遂できなかったという2つの理由による。 平成24年度は、平成23年度からの繰越額と平成24年度の交付予定額の全額を使用することを予定している。これは、調査地域を6地域予定していたところ、平成24年度中に3町村で調査を行う計画としたところから考えたものである。 当初は、聞き取り調査を中心として計画し、そこから所用経費を算定していたが、現時点ではワークショップの開催等に関するウェイトが高まり、執行上一定の経費配分の修正が必要になっていると考えられる。ファシリテータの謝金および交通費等に関しては、これを調査票作成費の一部と調査員の謝金・交通費の一部などから転用することで賄いたい。 また、ワークショップの記録等のために必要な機材および消耗品の購入や、東北地方太平洋沖地震発生後に出版された研究成果の中で、本研究において踏まえるべき内容のある出版物の購入が必要となってきている。これについても、予算執行予定を一部修正して対応したい。
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