研究課題/領域番号 |
23653126
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
鈴木 啓之 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (20206527)
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キーワード | 防災 / 地域コミュニティ |
研究概要 |
本研究においては、当初、地区(集落)単位の防災体制等に関するアンケート調査を軸とした研究を予定していたが、平成24年度には、実践的に地区(集落)住民の防災意識の向上を目指したワークショップなどを開催することにより、防災意識の変化を把握する手法での研究を行う形に研究計画を修正した。 その計画を踏まえ、平成24年度は、高知県内2箇所でワークショップ等を実施し、それを踏まえた研究を行った。ワークショップの開催地域は、当初、高知県幡多郡黒潮町内の臨海部を1箇所、同町内の山際の箇所の2箇所を選定していたが、住民側の都合により、山際の集落については開催1ヶ月前になり、急遽場所を変更せざるを得なくなったため、高知市内の最大津波浸水予想の範囲からわずかに外側の地域(あるマンション)を選定し直し、実施した。ワークショップの開催に当たっては、事前・事後に防災意識に関するアンケートをとり、意識の変化を把握した。また、黒潮町では研究結果の報告を住民に対して行った。その結果の全体は研究室でまとめ(未出版)、一部分は、高知大学教育研究部総合科学系地域協働教育学部門研究論文集『Collaboration』Vol.3(2012年3月31日)に「コミュニティ防災の取り組み事例から見る大学教育と地域との協働──地域協働教育の意義に関する試論──」の中に反映して出版した。 臨海地域(黒潮町上川口浦地区)では、参加者も多く、その関心も極めて高く、地震災害に関する知識の面でも、防災に関する意識の面でも、かなり明瞭な改善が見られたものの、やや内陸に位置する高知市のマンションでは、関心度、モチベーションがやや低いことが明瞭になったほか、防災意識の改善についてもマンション住民全体の防災意識の低さを反映して、参加者内でも意識の改善幅がやや小さいと評価できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の採択後、東北太平洋沖地震が発生し、地震防災に関する環境が一変したことを踏まえ、平成23年度は、念頭に置いていた自治体等とのニーズの摺り合わせと研究計画の修正に時間を費やすことになったため、実質的に平成24年度を本格的な研究実施時期の初年度とせざるを得なかった。また、平成24年度の研究実施にあたって、1地区で地区住民側に不測の事態(役員の病気)が発生し、地区の再選定を迫られるなどのこともあり、年度中にさらに1~2地区でワークショップを実施することができなくなったなどのことから、当初予定よりもやや遅れる結果となった。ただし、臨海部と内陸部、農村部と都市部の意識の違いはある程度明瞭に確認できたため、深刻な遅れはないものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、最終年度のため、年末までに3~4地区(臨海部、山間部、臨海部に近い内陸部等)でワークショップと事前・事後アンケートを実施し、平成24年度に行った分析を他地域についても進めることで、住民の防災意識を向上させるためのポイントを整理すると共に、「避難」の段階を中心にした防災体制づくりと防災意識向上のための地域特性に即したモデルづくりを行いたい。すでに、3地区については、平成24年度末以降、対象地域との摺り合わせを始めている。 なお、すでに実施した2地区の研究結果については、早期に印刷し、今後のワークショップや対象自治体担当者に配布できる準備を進めたい。 次年度後半には、これらの準備を踏まえて、ワークショップとアンケートを実施し、それらを分析して、最終報告をまとめる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では、アンケートの印刷等にかなりの経費を割く予定であったが、ワークショップ参加者を対象にしたことで、アンケートは低コストで印刷できることになったが、他方で、ワークショップの結果等、研究結果について自治体および地域住民に報告することが重要となった。このことから、報告書の印刷(大部なため、通常の出版に載せられない)にある程度の経費を充てざる得ない(30万円~50万円と予測している)。ワークショップの開催とアンケートの分析には、ファシリテータの謝金等も含めて、最低で一回平均20万円強の経費が必要なことがわかったので、60~70万円程度がそれに必要となり、残余が上記の印刷費と、ワークショップ実施等に関わる消耗品となる。
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