研究課題/領域番号 |
23653127
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
永井 智香子 長崎大学, 留学生センター, 准教授 (60295110)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 新華僑二世 / アイデンティティ |
研究概要 |
研究の目的は申請テーマにあるように新華僑二世のアイデンティティを探ることである。申請者が勤務する大学にも親の留学や仕事の都合で幼少のころ来日した「新華僑二世」が何人か在学中である。申請者はその中の一人である教育学部4年の馬賢鳴と話す機会が多く、話しているうちに申請者には馬賢鳴は日本と中国の狭間に立つ独特のアイデンティティを持っているのではないかと思われた。そして、そのアイデンティティに興味を持った。馬賢鳴本人も周りの同世代の日本人と自分のアイデンティティの違いに気づき、戸惑い、興味を持ち、多くの新華僑二世とのネットワークを持っていた。 いわゆる新華僑とは80年代以降に仕事や留学などで来日したものをいう。申請者の知る限りでは大学生以上のあるいは社会人になって間もない新華僑二世のアイデンティティについての研究はほとんど見られない。「グローバル人材」という言葉がよく使われる昨今であるが、その言葉に関連しても、そのアイデンティティを探ることに意義があると思われる。 研究の手法はインタビューである。23年度の目標はいかに多くのインフォーマントにインタビューができるかであった。馬賢鳴の協力を得、インタビューに応じてくれるインフォーマントをさがすことができた。結果的には予定より多い11名の新華僑二世にインタビューをすることができた。 さらに、華僑関係、異文化関係、アイデンティティ関係などの学会、書籍、論文などにあたり、2年目の研究のまとめを行う準備も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定より多くの人数の新華僑二世にインタビューができ、しかもインフォーマント全員が非常に協力的だったということがあげられる。そのことはよいデータの獲得にもつながる。その協力的だった理由はインフォーマントら自身が自分のアイデンティティに興味を持っており、研究の結果をぜひ知りたいと思っているからではないかと思われた。 申請書にはインタビューを実施する人数は関西地区3名、中部地区1名、関東地区3名の計7名を予定しているとしたが、実際には九州地区1名、関西地区3名、関東地区2名、中国上海5名の計11名に一人約1時間にわたるインタビューを実施することができた。申請書に記入した場所と人数と実際にインタビューを実施した場所と人数が一部違うのはインフォーマントの中に、申請書提出時からインタビュー実施までの間に大学を出て、社会人となったものがいたからである。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度5月現在は実施したインタビューの書き起こし作業を行っている。この作業を夏に終え、9月以降はその分析をすすめたいと思っている。そのために関連図書、関連論文を読み、できるだけ多くの関連学会に出席したいと考えている。現在、異文化間教育学会に入っているが、本研究に関連して、平成24年度5月現在、多文化関係学会、日本華僑華人学会に入る準備をすすめている。平成24年度の1月以降には報告書を作成したいと考えている。その報告書はデータベース的なものとし、平成25年度にはその報告書をもとに学会発表をしたり、論文をまとめたりしたいと思っている。 まだすべてのインタビューデータの書き起こしを終えていないので、はっきりしたことは言えないが、インタビューをした中に何人かの大学生のインフォーマントがいる。彼らは皆、その中国と日本の狭間に立つ、境界的ともいえる自らのアイデンティティをポジティブにとらえ、社会人となった場合それが「武器」になるのではないかと考えているようである。もし本当に社会に出たあと、「武器」となるのであれば、申請者には新華僑二世こそすぐれた「グローバル人材」なのではないかと思われる。インタビューをしたことによって申請者は新華僑はすぐれた「グローバル人材」なのかどうかということに興味を持った。インタビュー後すぐ社会人となったインフォーマントがいるので、この研究をさらに続けるためにもその社会人となったインフォーマントに2度目のインタビューを実施したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度はすべての研究費を旅費として使用した。申請書には旅費を450000円、物品費を50000円としていたが、予定していたインフォーマントが上海に住んでいることがわかり、急遽上海でインタビューを実施することとし、旅費の使用が予定より多くなった。 平成24年度は前年度よりの繰越金が15300円あるので、研究費は415300円である。ほぼ申請書に記入した通りの使用計画としたいと考えている。繰越金は旅費に上乗せする。つまり、物品費が50000円で、旅費が215300円で、その他が150000円である。物品費は主に書籍の購入にあてる。旅費は関連学会出席と補充インタビューにあてたいと考えている。また、その他の150000円は報告書の作成代としたい。
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