研究課題/領域番号 |
23653135
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
関 いずみ 東海大学, 海洋学部, 准教授 (20554413)
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研究分担者 |
後藤 雪絵 東海大学医療技術短期大学, 看護学科, 助教 (70551365)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 漁村女性 / 共助システム / 地域組織 / 漁協女性部 / 高齢者支援 |
研究概要 |
漁村においては、女性、とりわけその最も基本的な組織である漁協女性部が中心となって、環境や生活、福祉に関する地域活動を担ってきた。しかし、漁協女性部自体の高齢化や部員数の減少が進み、地域活動の維持には課題がある。本研究では、高齢化が進む漁村地域における高齢者支援の活動への、漁村女性の関わり方の実態とその課題について分析し、漁村における共助システムの担い手やあるべき姿について考察することを目的としている。 平成23年度の調査研究では、まず漁港背後集落台帳等のデータから漁業集落における高齢化の状況について整理した。漁業集落における高齢化率は37.6%であり(平成19年度)、同年の日本全体の高齢化率を約16ポイント上回っている。高齢者と言っても、現役で漁業に従事している人も多くその実態は様々であるが、高齢者の独居世帯や夫婦二人世帯は増加しており、今後支援の需要が高まることは確実である。次に事例調査を実施し、漁村の女性たちによる高齢者支援活動の実態について整理した。調査対象地としては、高齢化率50%以上の漁業集落を複数抱える山口県周防大島町、漁協女性部活動が活発な山口県萩市、地域外移住者等が多く高齢化率が低い沖縄県石垣市を選定した。 周防大島では漁協女性部の活動が低迷しており、女性たちの組織的な活動は見られなかったが、地区の女性たちが福祉員として民生員と連携して実際的な活動を担っていることが分かった。また、グループホームで起業する女性の事例も見られた。萩市では女性部による弁当の配達やサロン運営の事例が目立った。これらの活動では担い手の高齢化や後継者不足という課題がある一方で、収入機会や生き甲斐創出という効果があることがわかった。石垣島は若い移住者も多いが、島内での格差は深刻であり、必ずしも高齢者支援は充足していない。地域住民が地域活動に参加するシステムが重要であることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高齢化率の高い地域、低い地域、漁協女性活動が活発に行われている地域と言った、特徴的な地域における事例調査を通して、漁村の女性たちの高齢者支援活動についてのいくつかのパターンを抽出することができた。同時に、漁村女性の高齢者支援に係る共通課題について把握する手掛かりを得ることができた。また、事例調査地域における個別の課題について抽出し、それらの背景にある地域の実態についてある程度考察することができた。さらに、実際のサロンに参加することで、地域の高齢者の支援活動への要望等についての意見を聞き取ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらに事例調査を進め、漁村女性の高齢者支援活動の特徴や課題について分析する。事例調査対象地としては、一つには漁協女性部活動が活発に行われている地域を抽出する。また、漁村は古来より、漁場の共同管理や村張り定置に代表されるように、生産の共同性を背景としてコミュニティが成り立ってきており、このような地域システムは、地域内の弱者(高齢者や母子家庭)を地域ぐるみで支援するという福祉的な役割をも担ってきたことから、既存の地域システムと現在の高齢者支援活動の関連性についても見て行きたい。さらに新たな担い手による活動状況の実態を見るために、住民ボランティアやNPOと言った、地域の高齢者の見守りや声かけ、行政による高齢者支援サービスへの橋渡しなどを目的とした組織について調査する。 これらの事例調査や文献調査の結果を基に、漁村地域においてこれまで培われてきた地域内のシステムを今後どのように活かしていくことができるのか、また、これまでのシステムを補完し、維持する仕組みのあり方とはどのようなものなのか、ということについて考察していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費については、主に事例調査のための旅費として使用する。事例地区について再度検討し、効率よく調査を進められるよう計画する。また、基本的な文献については平成23年度に収集したが、補足する必要のある文献についてはそろえて行く。最終年度になると考えているが、事例調査地の中から1~2地区を選定し、地元女性部等と調査結果について意見交換し、調査内容を補強する研究会の開催も検討している。
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