研究課題/領域番号 |
23653140
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
小澤 亘 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (30268148)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 外国人児童の学習支援 / 多言語DAISYテキスト / 多文化共生社会 / アクションリサーチ / 国際情報交流 / ブラジル / インドネシア |
研究概要 |
1)湖南市教育委員会と連携し、初期日本語指導「さくら教室」スタッフと共同して、当教室の3カ月間の日本語学習カリキュラムを、多言語DAISY教材化する作業を行った。日本語とポルトガル語・スペイン語・中国語・英語・タガログ語各言語の多言語DAISY教材の試作バージョンを作成した。2)それに先立ち、学生・社会人を対象として多言語DAISYテキスト作成講習会を実施し、作成協力ボランティアの育成を開始した。3)湖南市教育委員会との連携においては、石部南小学校の外国人児童15名を対象とする日本語教室(最大クラス人数規模は3名)に、9月より入り、iPad3台を配置した。DAISY教科書が、外国人児童にとって、いかなる効果を発揮するかについて検証を開始した。4)京都市御室小学校において、日本語が不自由なインドネシア児童の学習支援において、DAISY教科書を利用した支援システムの構築を目指した。国語・数学等において、必要個所(要約を含む)をインドネシアのカジャマダ大学関係者と連携して、インドネシア語に翻訳してもらい、DAISY化はわれわれのプロジェクトが担うというインターナショナルな支援ネットワークの構築を試みた。こうした国際連携活動の経験を基盤として、DAISYコンソーシアムの国際会議において、口頭発表を通じて、多言語DAISYテキストを基盤ツールとする外国人児童支援のネットワーク形成の重要性について問題提起した。5)さらに、石部南小学校および御室小学校の図書室に、タッチパネル型PCを据え付け、外国人児童、障害児童、日本人児童が共にDAISY教材に触れられる多文化共生教育空間を学校に創造する試みにも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画は、「(1)滋賀県湖南市の初級日本語教室をフィールドとして、外国籍児童の置かれた実態を参与観察するとともに、3カ月間カリキュラムに対応した多言語DAISYテキストを共同開発する。(2)その後、そうした実践を基盤として、滋賀県における日系ブラジル人学校・公立学校・その他の外国籍児童支援団体と連携して、多言語DAISYテキストの有効性を検証していく。」というものであった。 (1)については、今後も継続していくべき課題であるが、すでに5つの外国語に対応する多言語DAISYテキストを作成することができた。(2)については、湖南市立石部南小学校を基盤フィールドとしながら、滋賀県のフィールドワークを開始している。日系ブラジル人学校に関しては、サンタナ学園において2回調査を実施し、関係構築を図った。 研究計画初年度としては、おおむね順調に進展していると自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
1)石部南小学校において多言語DAISYテキストの共同開発を行うとともに、その効用についての検証を継続する。とくに、図書室に配置したタッチパネルPCの有効利用を図ることによって、学校全体としてのDAISYテキスト利用の理想的な在り方について検証していく。2)日系ブラジル人学校のサンタナ学園に日本語教育支援に入っている関係者と連携して、多言語DAISYテキストの開発を進める。こうした活動を基盤として、滋賀県における支援ネットワークの構築を目指す。3)さらに、ブラジル・サンパウロ市のカエルプロジェクトとの連携について、具体的な交渉を開始し、今年度および来年度における具体的な活動計画を立て、実施する。4)御室小学校におけるインドネシア児童の支援の理想的な在り方を追究することにより、インドネシアの大学、その他関係機関とのネットワークを樹立し、さらに、インドネシア留学生協会との連携を進展させることによって、個人の支援を越えた仕組み作りを行う。5)学校の教育空間を変革しようとするとき、学校内での働きかけには限界があることから、京都市右京区のNPO・地域活動家と連携して、DAISYテキスト普及の仕組みを構築する。そうした中で、障害児童も、外国人児童も、日本人児童もともに教科書に自由にアクセスできるコミュニティー形成を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
連携先を拡大していく必要から、パソコン等新たな機器購入(DellnotePC 7万円×2台、高性能ヘッドホンマイク1.5万円×2台など17万円、DAISY作成ソフト(ドルフィン・パブリッシャー)2セット追加購入など15万円を支出する。 引き続き、多言語DAISYテキスト作成していくが、そのアルバイト費用および翻訳費用として、25万円の支出を見込んでいる。 湖南市おけるワークショップ開催およびDAISY作成ボランティア養成ワークショップの開催を予定しており、講師謝礼(3万円×2回)、講師の旅費(5万円×2回)として、16万円の支出を見込んでいる。 フィールドワークは、滋賀エリアが中心となるが、その調査旅費およびDAISY技術の支援として支援技術開発機構(ATDO、調布市)への出張を予定している。旅費として、7万円を見込んでいる。 以上、直接経費の合計で80万円を次年度に使用する予定である。
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