前年度に引き続き、各種高齢者施設(サービス付き高齢者専用住宅、老健、認知症専門病棟、NPO運営のデイサービス)での聞き取り調査と、テーマに関連したシンポジウム・研究発表会等に出席し資料を収集した。このうち、園芸療法を主体としたデイサービスセンターでの調査から、人付き合いを好まないお年寄りにおける園芸活動の効用についてデータを得ることができた。園芸療法については、日本園芸療法学会、および人間・植物関係学会の年次大会においても資料の収集ができた。また、オーストラリアを発祥地とするダイバージョナルセラピー関連の研究発表会に複数回参加するなかで、高齢者施設利用者において、どのような形で有効かつ能動的な選択機会が提供されているのかが、人付き合いを好まない高齢者のQOL向上に重要な役割を果たしている可能性が明らかになった。収集した資料に基づいて、『スキナー以後の心理学(21)行動分析学から見た「選択」』、高齢者における「選択のパラドックス」の実情』という2編の論文を年度内に公刊した。さらに、施設入居者と在宅高齢を比較しながら、 人付き合いを好まない高齢者の日常生活における余暇動選択と QOLの関連について聞き取り調査を行い、その成果については次年度夏の日本心理学会において研究発表を行う計画である。直接の聞き取り調査と現場の行動観察を通じて得られたデータに基づき、QOLの階層性について理論化を進め、1年以内に総括論文を刊行する予定である。
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