研究課題/領域番号 |
23653149
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
松山 郁夫 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (90363415)
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キーワード | 自閉症 / 発達障害者支援センター / 自閉症者の状態 |
研究概要 |
本研究の目的は、自閉症者の日常生活や社会生活の質を高めることを目標とした地域包括支援の進展を目指す方策を案出することである。平成24年度については、①地域社会における青年期・成人期の自閉症者に対する支援の現状の明確化、②地域社会における青年期・成人期の自閉症者に対する支援の方向性の明確化、以上のことを目標に次のような研究を行った。 ①については、独自に作成した質問紙表を使用したアンケート調査(発達障害者支援センターの職員141名からの有効回答があった)及び発達障害者支援センター5か所での現地での調査・情報収集によって、地域社会における青年期・成人期の自閉症者の社会的支援とネットワークに関する認識について検討した。このことから得られた知見を基にして、②地域社会における青年期・成人期の自閉症者に対する支援の方向性について考察した。 その結果、発達障害者支援センターの職員は、青年期・成人期の自閉症者の状態を広く捉えていること、その状態を状況把握の困難さ、障害の特性、及び適応行為の困難さに関する視点から見ていることが示唆された。また、特に自閉症者が有する独特な意思疎通と適応行動の難しさに関心を向けていること等が明らかとなった。これらの自閉症者の状態に対する支援者の認識から、地域社会で自閉症者の生活を支援するうえで、人間関係を通して発達を促したり行動を発展させたりするように広く配慮することが不可欠で、支援の方策を案出するうえで基本となる見方であると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、自閉症者の日常生活や社会生活の質を高めることを目標にして、地域包括支援の進展を目指す方策を案出することを目的としている。平成24年度は、①地域社会における青年期・成人期の自閉症者に対する支援の現状の明確化、②地域社会における青年期・成人期の自閉症者に対する支援の方向性を明確化する研究を行うことを予定していた。このため、発達障害者支援センターの職員を対象として、青年期・成人期の自閉症者の支援とネットワークに関する認識と取り組みを検討した。 発達障害者支援センターの職員に対するアンケート調査によって、発達障害者支援センターの職員における自閉症者の状態、学校や福祉施設等社会的支援、及びネットワークに関する認識を検討した。また、発達障害者支援センターでの現地調査・情報収集によって、青年期・成人期の自閉症者の社会的支援とネットワークに関する認識について考察した。これらのことから、青年期・成人期の自閉症者が地域社会で自立した生活を送るための支援のあり方が明確になったため、当初予定していた本年度の研究目的をほぼ達成したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
①地域社会における青年期・成人期の自閉症者に対する支援の方向性の明確化 平成24年度に見出した地域社会における自閉症者に対する支援の方向性を明確にする。このために、自閉症者の支援を行っているグループホーム、ボランティア団体、NPO法人等の機関・団体に「地域社会における自閉症者に対する支援の現状と課題」に関する独自に作成した質問紙票を使用した調査と現地での面接による調査を行う。これらから得られた結果を分析して、地域社会における自閉症者に対する支援や支援のためのネットワークの現状と課題を考察し、自閉症者に対する支援の方向性を明確にする。 ②地域社会における青年期・成人期の自閉症者に対する地域包括支援を目指す方策の明確化 ①の結果を踏まえて、地域社会において自閉症者の生活支援を行う各機関の連携やネットワーク化を図ること、自閉症者に関する理解を広げる活動を行うこと、及び生活支援を行うこと等に意義を明らかにする。これらの知見を基に、自閉症者に対する地域包括支援の進展を目指す方策を案出する。
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次年度の研究費の使用計画 |
地域社会における自閉症者を支援する機関・団体に対するアンケート調査(300団体程度からの回答を想定している)、及び10か所の地域における関係機関・団体に対して面接による調査を行う。 アンケート調査の郵送費に20万円、面接調査に40万円、研究内容をまとめた冊子の作成と関係機関への配布に10万円の支出を予定している。
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