本研究成果は、以下のとおりである。1点目は、チルドレンセンターを核とした英国と日本の子どもと家族支援政策と実践の比較である。英国は社会的養護を含めて地域基盤の子どもと家族支援が中心であり、社会的養護の施設入所が9割を占め、子どもと家族の地域支援体制を形成中である日本では、両者の社会的背景や歴史的経過も含めて根本的な差があった。さらに地域での子どもと家族支援のため、多機関連携を含めて予防的対応から危機的介入まで連続的に隙間なく対応しようとする英国は、政策と実践循環による計画・実施・評価の長年の蓄積があった。チルドレンセンターは子どもと家族への地域サービスハブとして設置され、実践と政策をつなぐ仕組みのひとつとして機能していた。 2点目はコミュニティソーシャルワークの理論と方法であるが、日本に導入されたそれらは断面的で、日本の状況に合わせて進化・発展した面もあったので、Community DevelopmentやCommunity Organization 等をふまえた整理が必要であった。しかしながら、子どもと家族の地域支援の事例で生じる課題、及びそこで求められる支援に大差はなく、生態学的視点やストレングス視点は、英国も日本と同様にコミュニティソーシャルワークの基本視点のひとつであった。 3点目は、地域での子どもと家族支援の多機関連携であるが、政策や法律規定に基づき、地方自治体毎に教育・保育・司法・保健・医療・福祉等の多機関連携システムがあり、地方自治体ごとに多機関参加の研修等が義務化されていた。その研修プログラムは、政策と実践連動の成果をふまえた実践的内容であり、個別の問題発見や対応から、地域多機関連携システムを基盤とした相談や送致システムまで明確であり、日本にも参考になる部分であった。 これらの研究成果は、学会や論文等で発表し、幅広い識者の意見や助言を得て研究を深めることができた。
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