研究課題/領域番号 |
23653156
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
宮本 和子 獨協医科大学, 看護学部, 講師 (60295764)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際研究者交流、カンボジア |
研究概要 |
平成23年8月~9月に第1次現地調査を実施した。調査対象地域としてプレイヴェン県・カンポット県から各2か村、計4か村を選定した。選定条件は現地協力団体であるCEDACの農民協会メンバーが活動している地域でコアとなる地域住民がいること、経済的状態は比較的貧困状況が深刻である村と平均的な村とが混ざるように設定した。 第1次調査の内容は村の概況観察とワークショップ(内容:住民ボランティアへの低体重児に関する健康教育、定住測定方法・イエローカードの体重曲線への記入方法説明)の開催であった。各村から6~10人程度のボランティア候補および村長等の村リーダー、保健センタースタッフが参加した。ボランティアの反応は村の子供たちの健康状態に関心があり、イエローカードの体重曲線の意味も「初めて分かった!」等、おおむね良好であった。しかし乳幼児の月齢計算が困難であること、成長曲線グラフへの記入に慣れるまで時間がかかること等が予測されたため、乳幼児体重計測プログラムの定着するようCEDACスタッフが毎月継続的に支援に入り、正確に記録をとれるよう計画した。 平成24年2月に第2次現地調査を実施した。9月以降の体重測定結果を分析し、村ごとに報告会を実施、ボランティア間でのディスカッションを行った。各村で多くの乳幼児に体重増加不良がみられ、連携研究者の生計調査結果から発熱・下痢が多くみられ、その後体重が容易に増加していない様子が見受けられた。3月から体重測定と同時に、調査票を用いて体重増加不良児の家庭訪問を実施し、不良の原因を確認して行くこととした。 また平23年度9~11月の洪水の影響を受け、対象村の一部は生活状況が大きく変化した世帯(主たる収入源である水稲の全滅、それによる出稼ぎなど)が多々見られることが判明した。下痢の多発がみられ、乳幼児の体重増加不良との関連、飲料水源の汚染が推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年間計画はほぼ順調に進行し、調査計画内容は十分達成できた。導入のワークショップは対象村リーダーやボランティア、研究協力団体から非常に好評であった。乳幼児体重測定記録である保健省配布のイエローカードの体重曲線はこれまで何の意味と目的があるのか村人に全く理解されていなかったが、このワークショップを通して理解された。単なる説明のみでなく、時間をかけて具体的に演習を行い、体験学習としたことは有意義であった。ただし、基礎教育の欠如の影響は大きく、グラフを作成することは村人にとって容易なことではない。しかし1度の説明のみでなく、継続支援を入れたことで測定手技・記録方法が確実に身に付きつつある。 また、調査協力団体の協力状況は良好であり、スタッフの能力は調査を遂行するに十分であった。団体代表やプログラム部門責任者も調査結果に大変関心を持っており、今後、他地域での実施協力要請をする際にも理解を得られると考える。対象村のボランティアは各村ごとに4~6名が非常に意欲的に活動している。調査参加者は3か村で40名強1か村で30名強であり、内3分の1~2分の1程度は継続的に体重測定に参加しており、参加者数は予想を上回った。体重測定プログラムは村人にとっても「毎月自分の子供の状況が身近で確認できる」との好評の声が聞かれた。 体重増加不良児の家庭訪問については開始したばかりであり、まだ具体的な結果や評価をできる段階にはない。 全体として順調な進展であるが、自然災害により調査対象地域の環境変化や対象村民の生活状況変化があり、その影響を十分に分析し、対応できない面があった。来年度の調査にはこれらの面を考慮し、追加修正が必要と考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.体重測定プログラムの継続:23年度と同様に4か村での乳幼児体重測定プログラムを継続する。9月までにCEDACスタッフの支援なしに、村人ボランティアによる自立した実施を目指す。2.体重増加不良児のフォローアップと増加不良理由の解明:体重増加不良児の実態把握のために家庭訪問をし、調査票を用いて情報収集を行う。また、生計調査(連携研究者調査)結果と本研究結果との関連性の分析を行う。これらの結果を元に子供たちが低体重になっていく原因を考えるワークショップを開催予定(24年8月)3.乳幼児の低体重問題解決のためのアクショングループの形成:上記ワークショップ開催後、体重測定ボランティア+αの村ボランティアメンバーによる、アクショングループを形成し、乳幼児の低体重改善のためのアクションプラン作成に向けた討議を開始する。4.下痢原因解明のための客観的調査の実施:昨年度の洪水後の下痢症の増加、生計調査から乾季に沼や河川の水をそのまま飲料水としている状況が確認された。安全な飲料水への理解、感染症への関心を喚起すること、等を目指し、水質検査や検便を追加実施したいと考えている(8月以降)。5.他の地域へのプログラムの普及:4か村での1年間の実施状況を分析、改善点を整理し、CEDAC農民協会の活動する他地域(村)での実施対象地域を拡大したい(9月以降)。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.物品費:(1)H23年度実施地域での体重測定プログラム継続や新規地域でのワークショップ開催時に使用する文具、(2)栄養プログラム検討のための費用(ボランティアによる試作費用、等)、(3)飲料水としている水源の水質調査や検便実施の費用(23年度から繰り越しの166,685円は主としてここに使用する予定)2.旅費:主として(1)代表研究者のカンボジア往復調査旅費2回分、(2)学会参加費、(3)連携研究者との打ち合わせ会議3.人件費および現地活動費:主として(1)CEDACスタッフによるプログラムフォローアップ経費、(2)ボランティアの家庭訪問実施謝金の支払い4.その他:主として(1)健康教育媒体作成費(ワークショップ等で使用する資料等の作成費)、(2)CEDACスタッフの現地旅費(レンタカー代、レンタルバイク代)、(3)会議費(村でのワークショップ開催費、新たな調査地域への説明会や導入時のワークショップ開催費、等)
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