研究課題/領域番号 |
23653156
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
宮本 和子 獨協医科大学, 看護学部, 講師 (60295764)
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キーワード | 国際研究者交流 / 低栄養 / カンボジア / 貧困 |
研究概要 |
平成24年度の活動とその成果は以下のとおりである。 1.村ボランティアによる体重測定活動の継続:4か村で継続した。長期継続測定する母子がみられ、一部養育者は児の体重測定の意義をよく理解しており、体重低下・増加不良時にその理由を生活の中で考えることができていた。ただし、10月以降は村からの出稼ぎ家庭の増加により継続測定事例の減少、実働ボランティア数の減少が見られた。 2.体重増加不良時フォローアップ活動とその結果分析:体重増加不良の背景を家庭訪問により聞き取り調査した。背景として多く挙がったのは下痢をした・風邪を引いた等の疾病と「ごはんを食べない」であった。「ごはんを(あまり)食べない」理由としてスナック菓子を食べる、野菜を食べない、朝ごはんを作るのは面倒、などが多かった。ボランティアらとの話し合いで「ごはんを食べない」のは「離乳食や栄養があって子供が食べるのに適した食事がわからない」可能性が上がった。またスナック菓子を食事代わりに摂ることに問題を感じていない養育者が多いこと、子供が欲しがると容易にあげてしまうこと(泣かれるのがいや)という状況が把握された。 3.飲料水の細菌汚染検査:2で下痢が多い理由の一つとして安全で衛生的な飲料水を得られない・子供に提供していないことが予測された。村ボランティアおよび有志家庭の飲料水をサンプルとして簡易水質検査を行った。フィルター水は安全としているが、管理が悪いため多数の大腸菌を検出したサンプルも見られた。 4.離乳食デモンストレーション:2への対応として離乳食および簡単で栄養があり子供が食べやすいごはんメニューを開発し、各村で実演・試食会を開催した。カンボジアでは通常食塩と化学調味料を大量に料理に使用する。このデモでは野菜を大量に使用し、化学調味料不使用、低塩分で行ったが参加者全員が「おいしい」と言い、乳幼児はお代わりをするなど好評であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.成果を上げている点:乳幼児の体重測定は対象地域の養育者が子供たちが低体重であること、低体重により疾病にかかりやすいことなどを理解する上で大きな意義があった。 活動に参加しているボランティアは乳幼児の低体重の背景に関心を持ち始めた。特に次の2点では理解が深まった。1)飲料水の細菌汚染について:飲料水を紙培地にて培養し大腸菌を目に見える「スポット」として確認したことで、細菌汚染を意識できた。2)乳幼児にとって必要とされる食事について:離乳食デモンストレーションを行ったことで具体的な望ましい食事を考えることができた。身近な食材で作れること、前の晩の残りご飯を活用してもおいしくできること、乳幼児には食塩・化学調味料は不要であり、野菜や卵・魚などを混ぜることで十分おいしくできること。ボランティアの一部は今後体重測定時に自宅有機野菜を用いて離乳食を作り提供したいと希望している。 連携研究者が進める生計調査では各家庭での無駄な支出を見直すことができ、医療費支出の多さや借金が多いことに気づくなど、自分たちの生計を見直し改善点を発見できた。 2.課題として見えてきたこと:1)改善すべき背景の多様さ・複雑さ:継続測定後体重改善のための取り組みを検討する際、計画時予測より多様な背景や原因について考え、対応する必要が見えてきた。2)生計記録は有効であるが記述を簡易化しないと普及は困難である。3)農民の生活に負の影響を与える多くの事柄が存在:天候不順により米作ができない、不作であるという状況があり、多くの村人が農業以外から収入を得るため出稼ぎに出ざるを得ない実情を目にした。両親の不在、貧困の深刻化が乳幼児の健康状況に大きな負の影響を及ぼしていることが実感された。天候等の影響を除くことは困難であるが、貧困問題と緊密に関係していることから本研究の目的と照らし合わせた時単なる「外部要因」とはできない。
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今後の研究の推進方策 |
この研究で導入した手法が今後継続的に実施でき、効果を上げるための方策について検証する。 1.乳幼児の体重をモニターすることの重要性は一部住民に認知され、村ボランティアにより継続運営が可能な状況であるが、より効果的に実施するためにはどのような改善をすべきか検討する。 2.低体重改善の具体的対策として飲料水の安全性を確保することと安価で栄養のある適切な食事が重要であることは認知されたが、各家庭で取り入れられ、継続的に実施されるには多くの課題がある。現状で何が可能かを明らかにする。 3.連携研究者が実施している農民生活調査や生計調査の結果と総合し、貧困改善と低栄養改善のための共通する対策を検討することが重要である。 4.上記1~3を進めるため、8月に4か村での住民会議を実施する予定である。これまでの調査結果を図表にわかりやくす示し、実情・課題を可視化できる資料として作成する。ボランティアに意見を求め、特に住民にとって必要性の高いもの・緊急度の高いものを選び住民会議の議題とする。資料は会議用にポスターや配布資料を作成し、住民が今後も活用できるものとする。住民会議では「こどもの低体重問題とその原因となる諸要因の改善」のために今後各村でどのような取り組みが可能か、また改善を困難にしている状況をどうしたら変えて行けるのか、などを討議する。会議後村人有志によるアクションチームを結成し、可能な取り組みを検討する。 5.これまでの取り組みと調査結果を「農民ネットワーク」の全国大会で報告する。これらの取り組みに関心を持つリーダーのいる村を見出し、今後乳幼児の低体重問題を切り口とした生活改善の可能性に関して意見を求める。
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次年度の研究費の使用計画 |
村でのアクションリサーチを継続するための費用=30万円:CEDACスタッフ人件費・交通・滞在費、村ボランティア活動費 住民会議会議開催費用=20万円:資料作成代、会議参加者飲料水 日本人研究者のカンボジア渡航・滞在費=18万円 日本国内活動費=2万円:研究協力者打ち合わせ会議交通費、情報収集のためのワークショップ参加費など 計70万円 平成24年度分現地調査費:約42万円
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