本研究の当初の期間は平成23~25年度の3年間である。26年度は、延長の1年で、以下のことを実施した。 この4年間で、経済連携協定(EPA)で来日したインドネシア人看護師・介護祉士候補を受け入れた病院を12、高齢者施設を20訪問、また第1陣から第4陣までの看護師候補者47人、介護福祉士候補者57人に聞き取りをし、時間経過とともに変わる日本体験の様相を把握するために、候補者とは適当な間隔をあけて繰り返し面接した。 平成26年度の目的は、3年間に蓄積したフィールドノーツを整理・分析し、不足分を追加面接で補充し、報告書を作成し、調査に協力して頂いた病院や施設の方々に研究成果を還元することである。 平成27年3月に成果をまとめた『インドネシア人看護師・介護福祉士候補者の日本体験―EPAプログラム第1陣から第4陣までの軌跡』(全75頁)を刊行し、関係者に送付した。 報告書の1章では、EPAを看護・介護人材の国際移動の歴史の中に位置づけ、2章では、EPA制度の発足と受け入れ支援体制(日本政府による予算的措置も含め)の整備について述べた。3章では、受け入れ先の病院や施設のEPA参加理由、候補者への研修・勤務体制について記述した。4章では、送り出し側のインドネシア医療事情とインドネシア保健省、看護学校、病院のIJEPAの受け止め方をまとめた。5章では、個々人のIJEP応募理由や知った経緯、渡日への親の反応や国家試験受験までの歩みについて述べた。6章では、日本で直面した看護師として働けないことで生じるショック、イスラム教徒として日本で働くことに伴う心や行動の変化やICTを駆使して母国とのつながりを維持している様や家族への送金の実態について述べた。7章では、EPAから帰国した人のその後を事例で紹介した。8章では、インドネシア人の若者にとってのEPAでの日本体験の意味を個人の発達的な視点や、文化社会的な視点から検討し、最後に提言を付した。
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