研究課題/領域番号 |
23653173
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
堀江 尚子 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (50598943)
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研究分担者 |
葛西 リサ 大阪市立大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (60452504)
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キーワード | 貧困 / 独居高齢者 / トワイライトホープレス / 社会包摂 / コミュニティカフェ / 更生施設 / 孤独死 / 独居死 |
研究概要 |
高齢による身体的機能の低下に加え経済的困窮状況では、周囲から孤立し生活に希望を持てず(このような状態ならびに人々をトワイライトホープレスと定義する)、その臨終は、多くの場合「孤独死」である。これまで孤独死対策のシステムは少なからず開発されてきてはいるが、充分な成果が得られている事例は少ない。本研究ではトワイライトホープレスの特性を分析し把握したうえで当事者の拠り所、つまり当事者が吸引される場を創設し、そこに孤独死を防止する仕組みを機能させ、現状の改善を目指すものである。 平成24年度は、コミュニティカフェのネットワーク化に向けての現地調査を実施した。本研究対象である、更生施設おおよど寮では、週1回、コミュニティカフェを開催している。ここは、トワイライトホープレス(施設を退所した高齢独居者)にとっては、生存確認の場として機能している点が興味深い。スタッフは、出席者を確認し、顔を見せないトワイライトホープレスについては、フォローを行う。こういった貴重な取り組みを行っているカフェは同施設のみではない。大阪市北区には、14もの拠点がカフェを開催し、それぞれの特色や参加者のニーズに応じた運営を行っている。そこで、24年度は、1)こういったカフェの統制を行っている大阪北区社会福祉協議会への数度にわたる聞き取り調査、2)これらのカフェについて訪問調査を行い、カフェの成り立ちや運営の状況やトワイライトホープレスの包摂内容について検討を行った。この中で、とりわけ大々的な取り組みを行う済美地区では、近年新築された公民館にて月2回、高齢者に手作りの昼食を提供している。作り手は地域の婦人会である。そこで顔をみない高齢者については、連絡したり、迎えにいったりといった対応をするなどということをしていた。今後は、これらのカフェをネットワーク化し、当事者がそこを流動的に移動できる仕組みを整備したいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、トワイライトホープレスの実情に焦点をあてその特性を抽出した。これをもとに、トワイライトを包摂する場の創設することが24年度の計画であった。まずは、その特性に合致すると思われる場をいくつか想定することから議論を進めた。その結果、場やそれに付加される特性は決してひとつではなく、複数必要であるとの議論に至った。また、トワイライトホープレスは、強制されることを望まず、自由参加型の場を好むということから、コミュニティカフェをネットワーク化し、そこにボランティアや教室、娯楽といった要素を組み込み、そのネットワーク内を自由に流動化できる仕組みの構築を目指した。この、ネットワーク化に向けては少々時間を要するが、そのための事前調査等はおおむね計画通りに実行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、第1に、カフェのネットワーク化を実現する。まずは、ネットワーク化に賛同するカフェに説明会を行うなどして、企画を伝達し、如何なる方法、如何なる付加価値をつければ、トワイライトホープレスを吸引できるかということをWS形式で議論する。 第2に、独自で生活することが困難なトワイライトホープレスも多く存在する。よって、こういった対象には、住まいと居場所を一体化させたサービスが望ましい。とりわけ精神疾患を持つ当事者にとって安定的なケアが得られることは重要な課題である。例えば、北海道札幌市内にあるNPO法人リカバリーでは、精神疾患を有する当事者へのグループホーム(シェアハウス型、独立住居型)の運営及び、居場所づくり、当事者主体のカフェの運営を実践している。このほか、滋賀県にあるNPO法人でも同様の取り組みを実施している。平成25年度はトワイライトホープレスの支援について、住まいと居場所を一体化させた取組(上記2事例の観察調査含む)を行う国内事例の検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
まず、カフェのネットワーク化については、それを議論するための会場費や、実際にネットワーク化を志向したのちの、研究補佐員の人件費等に充てる。このほか、住まいと居場所一体型事例の検討について、国内旅費を計上する。
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