平成24年度は、平成23年度における文献研究及び7ケースのケース検討をもとに、占い師3名が延べ30名の学生に対し実際に占いを行い、その様子を録音・録画した。これらの音声データは、文字起こしを行いプロトコルを作成した。その後、研究会等において録画データを見ながら音声データについて検討するデータ・セッションを繰り返し、占いにおける占い師とクライエントとしての学生のやり取りをディスコース分析等の手法を用いて解析した。また、日本語データの一部は英語データに翻訳し、イギリスのディスコース分析の専門家と共にデータ・セッションを行い、イギリスにおける占いの場面との差異についても検討した。 こうしたデータ・セッションから次のことが明らかとなった。まず、占いの場における占い師とクライエントの関係は、病院における医師と患者の関係と同様、占い師がその専門性や権力をクライエントに対し言語的・非言語的に示し、一方、クライエントは占い師に委ねる関係にあった。また、占い師はクライエントの過去や将来について当初は漠然とした内容を述べることが多く、クライエントがその内容を肯定すると、次第に内容を特定化していく傾向がみられた。更に、一つのトピックに関する占い師とクライエントのやり取りにおいては、最後に占い師が「その内容は手相に現れている」といったように、語られた内容を手相に最終的に帰属させる語りの定式化が見られた。その他に、占い師はクライエントの未来について現在形を用いた語り方をする場合があり、その際に現在形での確定的な言い方の後に「本当かどうかわかりませんけどね」と不確定性を付加する現象等が見られた。 これらの分析結果から、占いという場において過去や未来がいかに立ち現われるか、その特徴が明らかにされた。特に、占い師とクライエントの権力関係や未来を手相に帰属させるディスコースの存在が明らかにされた。
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