研究課題/領域番号 |
23653176
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
林 直保子 関西大学, 社会学部, 教授 (00302654)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 地域通貨 / ゲーミング / 地域活性化 |
研究概要 |
本研究の目的は、地域通貨のデザインと地域通貨流通量の間の関連構造を明らかにすることを目的としている。平成23年度は、地域通貨運営者へのインタビューおよび、探索的ゲーミングの実施を計画していた。この計画に従い、国内の複数の地域通貨の運営担当者からインタビューを行った他、東京都内の複数の地域通貨流通地域の商店街でのフィールドワーク、大阪府内で運営計画中の一地域通貨について、インタビューを行った。同時に、全国の地域通貨の情報収集を行い、実施時期、方式、運営形態等についての詳細なデータベースを作成した。上記質的調査の結果をもとに、地域通貨の成功条件についてのチェックリストを作成し、データベース化した情報に当てはめ、客観的な分析手続きを適用する作業を年度末までに開始している。この手続きで作成したデータをもとに、ブール代数分析等の分析手法を用いることで、地域通貨の成功条件をある程度明確にすることができると考えられる。平成23年度にはまた、実験室内にコミュニティを形成し、法定通貨と地域通貨の流通を測定するシステムを確立するため、探索的ゲーミングを実施した。このゲーミングでは、実験室内の記録用カメラとICカード、カードリーダを用いて通貨の流通を記録する方法を試みた。その結果、ゲーミングの設計はある程度の完成度に達したが、仮想のコミュニティにおけるロールプレイ状況を用いたゲーミングの限界もまた明らかになった。平成24年度には、こうした問題を解消した新たな実験デザインを開発し、最終的な実証作業を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い、研究が順調に進展している理由として、地域通貨の運営者からの詳細な聞き取り調査が実現したことがあげられる。この聞き取りにより、地域通貨の運営に伴う問題点がかなりの程度整理できたため、その後の研究効率が大きく向上した。また、ゲーミングの開発にあたっては、携帯電話のアプリを用いる方法の実現可能性が高まり、より効率のよい方法を用いることができる見込みとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、平成23年度にすでに着手している地域通貨データベースの整理を進め、ブール代数分析により、地域通貨成功条件を明らかにする。この分析結果と、23年度に行った探索的ゲーミングの結果を踏まえて、確証的ゲーミング実験を行う。このためまず、ゲーミングに用いるためのアプリの設計・開発を行う。このアプリを用いて、まず大学生を参加者として、実際の学生生活の中で実験的に地域通貨を流通させ、その流通状況を記録・分析する。この実験では、キャンパスにおいて地域通貨が流通することで、参加者の貨幣意識や、信頼、ネットワーク等の社会関係資本がどのように変化するかを測定し、地域通貨流通の効果を確認する。この段階で、得られた成果をまとめ、学会報告するとともに、論文を作成する。また、上記アプリを用いたゲーミングが完成した後、このゲーミングを地域において市民が参加するサイエンスカフェ風の実験として実施することを計画している。研究代表者がメンバーとなっている「関西大学社会的信頼システム創生センター」は、大阪北区天神橋筋商店街内に、地域研究拠点「リサーチアトリエ・楽歳天三」を設け、商店会加入店舗の店主を中心とした地域住民との交流を進めており、本研究の最終段階では、商店街利用者を対象としてゲーミング参加者を募り、上記、サイエンスカフェ実験を実施する。またその成果を地域社会に簡易冊子として報告することを通じて、商店会理事会が中心となって推進している地域活性化活動においても一定の貢献を行うことが可能となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度には、聞き取り調査の音声データの整理のためのアルバイト経費を40万円計上していたが、聞き取り調査が当初予定より効率的に行われたことにより、約30万円の繰越金が生じた。また、23年度には、実験室内で行うゲーミング・シミュレーションにおける通貨流通記録システムのための物品費(主にICカードリーダ)と制御プログラム開発費を計上していたが、実施した探索的実験の結果と上記聞き取り調査の結果を踏まえ、ICカードリーダと制御プログラムによるデータ管理ではなく、携帯電話アプリを用いた方式に変更する判断を下し、これら物品費およびプログラム開発費を次年度に繰り越し、上記の30万円とあわせた875,975円の繰越金を、完成度の高い携帯電話アプリの開発費やすこととした。平成24年度には、このアプリ開発と、実験実施費用(物品費と実験補助アルバイト)に予算の大半を投じるほか、研究成果報告旅費を支出する予定である。
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