本研究は、地域通貨のデザインと地域の社会的条件、地域通貨の流通量の間の関連構造を明らかにすることを目的としていた。最終年度である平成24年度には、平成23年度に引き続き、地域通貨運営担当者へのインタビューを行った。平成24年度には特に、東日本大震災被災地において地域通貨導入を試みている運営団体へのインタビューと、地域通貨の導入後、運営を終了した運営団体の元担当者へのインタビューに重点をおき、質的調査データを収集した。これら一連の質的調査データにもとづき、地域通貨導入の目的、導入する地域の特徴にあったデザインの構成について変数の整理を行った上で、ブール代数分析を行った。 また、大学の専門科目受講生間で流通する地域通貨の流通実験を行い、実験の前後での社会意識(主として信頼)の変化を検討した。その結果、地域通貨の使用回数とコミュニティ意識尺度得点との間に正の相関、用心尺度得点との間に負の相関がみられた。しかし、地域通貨の使用回数と信頼の間には関連が見られなかった。地域通貨は時として「信頼の通貨」と呼ばれることがあるが、本実験の結果、通貨の使用経験がコミュニティメンバーの信頼を促進するとはいえない。地域通貨の利用と社会意識の変化に関する本分析結果は、平成25年度日本グループ・ダイナミックス学会で発表予定である。 平成24年度にはさらに、地域通貨の流通実験を可能とするスマートフォンアプリを開発した。このアプリは最大50名の地域通貨流通を管理することができるアプリで、コミュニティメンバーが互いに簡易メールと通貨を他のメンバーとの間で送受信することができるものである。このアプリを用いた地域通貨流通実験を行い、データ整理を行っており、平成25年度中に論文として発表予定である。
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