研究課題
本研究では、授乳・離乳に関する厚生労働省の指針(ガイド)が病院(産科)や保健センターにおける指導や母親の授乳および食に関する養育行動にどのような影響を与えているか、東京、大阪の地域間における比較、日仏(Toulouse市)の文化比較により明らかにするため、各地域で質問紙調査(及び日本の全国調査)を実施した。今年度は、主にデータの分析とまとめを行った。厚労省の「指針」が示す離乳完了の時期に注目して分析したところ、母親の理想とする母乳終了月齢および実際の母乳終了月齢はいずれも東京・大阪よりフランスが有意に早く、3地域とも実際の授乳終了月齢が理想を下回る結果であった。東京・大阪の母乳終了月齢は「指針」が示す範囲内であったにもかかわらず、東京では理想と現実のギャップが顕著であった。一方、病院が理想とする母乳終了月齢は3地域ともほぼ同時期で、母親の理想や実際より相対的に遅かった。また、保健センターの理想とする母乳終了月齢は、東京では病院と同時期であったが、大阪は東京よりも有意に早く、離乳食の開始も東京より早い方が望ましい等、授乳の早期終了に寛容であることが窺われる。母親が母乳をやめた原因・理由として、東京では「母乳不足」「母親の仕事」、大阪では「子の母乳離れ」「子の月齢」、フランスでは「母親の仕事」「母乳不足」が上位であった。また、東京では「母乳不足」をやめた理由としてふさわしくないと評価する傾向が見られたのに対し、大阪ではふさしいと評価する傾向が見られた。その他、出生後赤ちゃんに何を与えたか、それを誰が決めたか、粉ミルクに関するアドバイス、離乳食の指導やその受けとめ等についても地域間で違いが見られた。以上から、授乳・離乳について、理想と現実に乖離のある東京、子どもの主体性を尊重する大阪、母親の主張が重視されるフランスといった地域的特徴があるのではないかと考察された。
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10.1016/j.infbeh.2014.08.006