研究課題/領域番号 |
23653193
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
根ケ山 光一 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (00112003)
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研究分担者 |
河原 紀子 共立女子大学, 家政学部, 准教授 (90367087)
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キーワード | 国際研究者交流 / 日本と英国 / 母子コミュニケーション / 抱き / モーションキャプチャ / タウ解析 / 距離 |
研究概要 |
本研究では,日本及び英国の母子を対象に,抱き下ろし・抱き上げ等のやりとりをビデオ撮影するとともに,モーションキャプチャでその際の身体各部位の運動軌跡を記録し,定量的に解析することを目的とした。実験は日英の大学の実験室を使用し,約3か月の間隔をあけて生後6か月(第1期)と9か月(第2期)の2回行われた, 抱き下ろし・抱き上げの分析からは,母親の身体各部がダイナミックに協応してスムーズな手の接近が生み出されていること,その動きにともなって足の停止,屈み,子への接触,抱き上げ,立ち上がり,歩き出し,抱き直しといった一連の行動が展開されていた。タウ解析をもとにすると,日本の場合,母親の腰の降下が接近の大きな運動の基幹をなしており,接触までの身体の動きには個体差が比較的少ないが接触後は大きくなること,その個体差はおもに屈み込みの長さの違いによるものであり,それは子どもの日齢差と相関していたことが明らかになった。 この場面で母親には,乳児に手を広げて相手の反応を喚起しようとするような行動や声かけなどが,乳児には母親の接近に対し手足をばたつかせてそれを歓迎したり声を発したりするという特別の行動が発現した。この母親と乳児の行動は母親の手と乳児の頭のへだたりが1m前後になる位置でよく見られ,文脈的にそれらはproxemics的観点から「挨拶」的行動とみなされると考察された。 日本の母子に比べて英国の母子にはこの挨拶様行動が,すでに第1期から有意に多発していた。一方日本の母子はそれらが乏しく,その傾向はとくに第1期に顕著であった。第1期の日本の母子には行動発現時の距離が短かったが,第2期においては少ないながらも英国と類似の距離帯に移行していた。これらより,母親に対する乳児の積極的な働きかけの存在が,この挨拶様の行動に大きく関与していることが示唆された。
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