大学における発達障害学生の支援は国際的に重要なテーマであり、我が国でも近年その取り組みが本格化しつつある。発達障害の中でも米国ではADHDが主要な支援対象となる一方、日本学生支援機構の報告に見られるように我が国では自閉症スペクトラム障害に関する報告が多い。申請者はこれまで、ADHD傾向自体には日米で差がないこと、日本においてはADHD傾向があっても支援を求めない場合が多いことを明らかにしてきた。今回、こうした日米間の違いの背景には、求められなくても先回りして他者を支援しようとする日本的な集団のあり方が関係しているのではないかとの仮説を立てた。本課題では、ADHD傾向と支援ニーズとの関係にソーシャル・サポートがどう関与しているかを、日本、米国、さらに第3の文化圏として中国も含めた比較を通して明らかにすることを目的とした。これまで、発達障害者への支援は認知機能との関わりで論じられることがほとんどであったが、文化的、社会的要因を考慮することの意義が実証されれば、支援のあり方にあらたな視点を加える必要性が求められるようになるはずである。平成26年度は、ADHDをめぐる文化的要因についての検討成果を発信するためのシンポジウムを平成28年に開催される国際心理学会で開催するための準備を進めた。なお、当初、研究協力者のもとをたずねる予定であったが、メールによるやりとりで、準備を進めることになった。
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