研究課題/領域番号 |
23653204
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
宮野 秀市 宮崎大学, 安全衛生保健センター, 講師 (00339681)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 心理療法 |
研究概要 |
平成23年度の研究計画は,大学生の抑うつやうつ病に対して予防的な介入を行うことを目的とした,コンピュータロールプレイングゲームの形式を採用した認知行動療法にもとづく自助プログラムを開発することであった.具体的には,1.自助プログラムに含まれる認知行動療法の要素の選定,2.ゲームシステムの仕様,ストーリー,発生するイベントの決定,3.自助プログラムの開発,4.自助プログラムの評価を求める予備調査であった. 平成23年度は,上記の計画にしたがって,「認知療法実践ガイド・基礎から応用まで」(Beck, 1995 伊藤他訳 2004)等の書籍や,インターネットを介して利用できるうつ病予防のプログラムであるMoodGYM (http://moodgym.anu.edu.au/welcome),その他,うつ病予防やうつに陥らない考え方の獲得を目的としたボードゲーム(Let's get Rational New Edition: Jerry Wilde, 1990)やカード形式の教材(認知行動療法・実践カード:こころネット株式会社)等の資料を参考にし,大学生に評価を求めながら自助プログラムを開発した. うつ病の予防や改善を目的としたコンピュータ上で動作する治療プログラムは多くあるが,ロールプレイングゲームの形式をとったものは国内外を問わずみあたらない.本研究で開発中のプログラムは,一般的なパーソナルコンピュータ以外の特別な設備投資をすることなく利用できるものである.また,ゲームで遊ぶという感覚で学習に取り組むことができるためユーザーに受け入れられやすくドロップアウトも低く,うつ病の予防に寄与することができると考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの到達度は,ほぼ予定どおりであると考えられる.ただし,自助プログラムは改定を加えつつ,現在も開発継続中である. 本研究の計画当初と比べると,現在はWindowsパソコンのOSに変化がみられる.すなわち,一般的なWindowsユーザーのOSの主流がWindowsXPからWindows 7へと移りつつある.また,2012年2月には次世代OSであるWindows 8のβ版(評価版)も公開され,2012年度中には正式に製品版がリリースされるとされている.現在,このようなOSの変化に対応しながら,できるだけ多くのユーザーが利用できるものにするべく自助プログラムの開発を進めている. いずれにしても,本年度前期には完全に開発を終了し,その後には完成版の評価を実施する予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,前期中にプログラム開発を完了させた後は,当初の計画どおりに自助プログラムの効果を検討する予定である.大学生40名を対象とし,それぞれ20名ずつの自助プログラム実施群と,実施しないウェイティングリスト群を設定する.自助プログラム実施群にはCD-ROMメディアで自助プログラムを配布し,個別に自宅あるいは大学のWindowsパソコンにて,各自のペースで学習を進めるよう指示する. 自助プログラム開始前,自助プログラム終了直後,終了3ヵ月後,終了6ヵ月後の各時点において,自助プログラム実施群とウェイティングリスト群それぞれに以下の質問紙を実施し,群と時期を要因とした分散分析によって自助プログラムの効果を検討する.質問紙は,認知行動療法についての理解を測定するためにTherapy Awareness Scale(Wright et al., 2002)を用いる.自動思考はAutomatic Thoughts Questionnaire(Hollon & Kendall, 1980)を用いて,非機能的態度は Dysfunctional Attitude Scale(Beck et al., 1991)を用いて測定する.また,うつ状態をベック抑うつ尺度(BDI-II)を用いて測定する.さらに,プログラム実施群には,学習内容のわかりやすさ,操作のしやすさ,楽しさ,満足度等について7件法の尺度を用いて評価を求める.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,自助プログラムのうつ病予防の効果を検証する.自助プログラムの実施者にプログラムを配布するためにCD-ROMメディア,効果を測定するための検査用紙としてBDI-IIベック抑うつ質問票が必要である.また,データの解析のために統計ソフトウェア(IBM SPSS Statistics メディカルモデル)が必要である.研究の途中経過を学会発表するために,国内旅費として100千円,外国旅費として300千円をそれぞれ計上した.また,研究成果を投稿するために,英文校閲として20千円,研究成果投稿として20千円を計上した.
|