研究課題/領域番号 |
23653204
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
宮野 秀市 宮崎大学, 安全衛生保健センター, 講師 (00339681)
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キーワード | 心理療法 |
研究概要 |
平成24年度は,抑うつ予防のための認知行動療法の理論にもとづいた自助ツールとしてのコンピュータゲームを開発した.また,ユーザーの嗜好性を含めた評価を明らかにするために,他の形式の自助ツールとの比較調査を実施した. 認知行動療法の理論にもとづいて作成された四つの自助ツール(ワークブック,インターネットサイト,ボードゲーム,コンピュータロールプレイングゲーム(RPG))について,概要や使用方法をプロジェクタを用いて大学生に説明した後,それぞれのツールに対して以下の評価を求めた. 調査1:四つの自助ツールをそれぞれどの程度やってみたいかについて,0点~10点の範囲で回答を求めた.(大学生124名,男性112名,女性12名).Wilcoxon signed rank testの結果,男性,女性共に,コンピュータRPGは,他の三つの自助ツールよりも有意に得点が高いことがわかった. 調査2:四つの自助ツールのそれぞれについてどのような感想を持ったか,自由記述(「○○は,」の後に続けて記述するように指定)で回答を求めた.(大学生160名,男性82名,女性78名).計量テキスト分析ソフトであるKH Coderを用いてテキストデータから頻出後を抽出し,対応分析を行った.その結果,コンピューターRPGは,「面白い」,「楽しい」,「やってみたい」と評価されたことがわかった. 調査の結果から,コンピュータRPGの形式を採用した自助ツールは,従来のワークブックやインターネットサイト等の形式の自助ツールに比べて,「面白い」,「楽しい」といった印象を持たれ,より「やってみたい」と評価されることがわかった.したがって,うつ病予防のための自助ツールの導入の際には,コンピュータRPG形式が受け入れられやすいことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの到達度は,ほぼ予定どおりであると考えられる.ただし,認知行動療法の理論にもとづいた自助ツールとしてのコンピュータロールプレイングゲームは開発したが,平成24年度は効果の検討までは実施しなかった. うつ病の予防や治療を目的とした認知行動療法にもとづく自助ツールとしてのインターネットサイトは効果があることが知られている.しかしながら,治療の手段として患者からはあまり好まれず,利用される割合は低く,これが欠点であった. そこで,平成24年度に開発したコンピュータゲームがユーザーに好まれるものであるかどうかを確認することが必要であると考え,インターネットサイトを含めた他の自助ツールと比較した調査研究を実施した.そのために,効果研究は平成25年度に行うこととなったが,計画全体には大きな変更はなくおおむね順調である.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,自助プログラムの効果を検討する予定である.大学生40名を対象とし,それぞれ20名ずつの自助プログラム実施群と,実施しないウェイティングリスト群を設定する.自助プログラム実施群にはCD-ROMメディアで自助プログラムを配布し,個別に自宅あるいは大学のWindowsパソコンにて,各自のペースで学習を進めるよう指示する. 自助プログラム開始前,自助プログラム終了直後,終了3ヵ月後,終了6ヵ月後の各時点において,自助プログラム実施群とウェイティングリスト群それぞれに以下の質問紙を実施し,群と時期を要因とした分散分析によって自助プログラムの効果を検討する.質問紙は,認知行動療法についての理解を測定するためにTherapy Awareness Scale(Wright et al., 2002)を用いる.自動思考はAutomatic Thoughts Questionnaire(Hollon & Kendall, 1980)を用いて,非機能的態度はDysfunctional Attitude Scale(Beck et al., 1991)を用いて測定する.また,うつ状態をベック抑うつ尺度(BDI-II)を用いて測定する.さらに,プログラム実施群には,学習内容のわかりやすさ,操作のしやすさ,楽しさ,満足度等について7件法の尺度を用いて評価を求める.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,研究成果を学会報告するために,国内旅費として190千円,外国旅費として300千円を計上した.また研究成果を投稿するために,英文校閲として20千円,投稿費として20千円,印刷費として120千円計上した.
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