本研究は,故人との絆のあり方に地域風土がどのように影響を及ぼしているのかを明らかにするものであった。特に北海道と津軽地方の2地域に焦点をあてて,比較検討を行った。 まず平成23年度は,フィールド調査と面接調査を実施した。フィールド調査では,津軽地方の霊場(川倉賽の河原地蔵尊)へ実際に出向き,故人との絆のあり方を考えるのに重要な資料を収集した。それらの資料から,津軽地方では,故人との絆を持ち続ける傾向が強いのではないかということが推察された。続いて北海道出身の学部学生14名,津軽地方出身の学部学生12名を対象に,死に対する儀式,死や死別に対する態度に関して半構造化面接を実施した。面接調査で得られたデータについて,量的分析を行ったところ,(1)津軽地方の学生は北海道の学生に比べて自宅に仏壇がある割合やそれにお参りする割合が高く,祖霊崇拝の風土が色濃く残っていること,(2)死ぬと存在はなくなると報告する学生が津軽地方と北海道でほぼ同じ割合であるものの,故人や先祖に「見守ってほしい」と思っている者の割合が津軽出身学生で特に高くなっており,故人との絆を感じる学生が津軽地方で特に高い割合であること,以上の2点が明らかとなった。 平成24年度には,前年度の面接調査で得られたデータを詳細に分析した。その結果,(1)地域に関係なく大学生では他者の死と自己の死では死後の存在についての捉え方が異なること,(2)津軽地方と北海道の学生における故人との絆に対するとらえ方に類似点と相違点があること,が明らかとなった。これらと平成23年度の成果について,3つの学会で報告した。 平成25年度は,親との死別経験のある5名の大学生を対象に,故人との絆に関する半構造化面接調査を行った。現在,面接調査で得られたデータについて,逐語録を作成しており,質的データとして詳細な分析を行う予定である。
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