研究課題/領域番号 |
23653211
|
研究機関 | 仁愛大学 |
研究代表者 |
久保 陽子 仁愛大学, 人間学部, 講師 (50600251)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 小児がん経験者 / 心理ケア / 臨床心理学 |
研究概要 |
小児がん経験者への臨床心理学的ケアを考える際に、まずは小児がん経験者と家族、コミュニティーとの信頼関係が重要であり、計画していたように関係作りから始めることとなった。具体的には、医療関係者については「関西がん医療研究会」に参加し、がん治療に携わる医療関係者の研究発表を聞き、内容についてディスカッションした。経験者の医療については国内でも数か所で始まったところであり、具体的情報が得られなかったが、経験者が闘病中に経験する医療を知ることができた。また12月には、厚生労働省科研費補助金がん臨床研究事業真部班主催の「第3回公開シンポジウム」に参加し、小児がん経験者のサポートに関する研究報告・討議に参加した。また、小児がん経験者については、NPO法人エスビューローにおいて、経験者の学習指導として「ネットでeクラス」に参加し、交流をもった(神戸新聞掲載)。8月にはエスビューロー主催の「第4回小児がん・脳腫瘍全国大会」に参加し、小児がん経験者の活動に参加して学童期から青年期までの経験者との交流をもった。また、6月にはがんの子どもを守る会福井支部の「小児がんセミナー」に参加し、思春期に闘病生活をした中年女性の語りを聞き、ディスカッションを行った。そこでは、経験者の心理ケアが得にくいことと求められることがわかり、闘病中からの顔合わせが重要であるとの指摘を得た。3月には福井県支部の経験者グループ「いこっさ」の会合に参加し、青年期と中年期の経験者の方々との交流を得た。さらに、8月には研究者が闘病中に心理ケアを担当した経験者1名について、予備調査としてのインタビューを行った。これら今年度の活動から、小児がん経験者には就学・就労など現実適応がまず求められ、またそれらに懸命であることから、心理的側面への検査やインタビューなど調査協力には配慮が必須であり、負担のないプランニングが必要と考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例の数や治療内容の関連から、研究協力先との調整が一部難しくなったが、経験者のコミュニティとの接点は複数得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
小児がん経験者の現状(就労や就業など)をふまえ、負担のない協力を得るには、調査数をより少人数へと再調整する必要性が出てきた。その場合、分析についても量的なものから質的なものへの変更がいると思われる。実際,調査協力が得られる人数によるが,少人数の場合,過去に思春期の小児がん経験者への心理検査について研究を行った機関に研究協力を求めることを検討しており、過去のデータを参照して,今回少数ながら得られたデータの分析・考察を検討する。また,心理検査はTAT,PF-study,HTPを予定しているが、事例ごとの質的検討にすることによって、研究協力を得た経験者の状況に合わせ、負担のない施行が可能になるとも考えられる。また,小児がん経験者の心理をPTSD(外傷後ストレス障害)として捉える研究がある。平成24年から福井大学医学部子ども診療部と連携し,PTSDの治療として小児がん経験者の継続的な心理面接を調整する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
調査について,調査協力者への謝金が発生する予定である。継続的な心理面接については,謝金が心理的影響を及ぼす可能性があるので慎重に検討する。また,分析において学生へ,心理検査(箱庭を含む)の評価においては臨床心理士への謝金や交通費が発生する予定である。
|