小児がんは治療の進歩が著しく,現在では7割以上の治癒率が期待できる病気となり,多くの小児がん経験者が社会復帰していくようになった。しかし、小児がん経験者は晩期合併症をはじめ、復学・就業といった社会的問題や家族・友人関係の問題など様々な心理的苦痛を抱えているともいわれている。そこで,本研究では、小児期に入院治療を経験した小児がん経験者の心理的特徴について明らかにし、小児がん経験者への心理ケアのあり方を臨床心理学的観点から検討することを目的としている。 今年度は昨年度に引き続き、調査研究を行い、その調査結果をまとめて国内研究会で発表した。調査は、小児期に入院治療を経験した小児がん経験者19名(7~21歳,中央値15.2歳)を対象に、心理検査と半構造化面接、保護者には退院後の経験者の様子を尋ねるアンケートを実施した。これらの結果から,15歳以上の対象者に不安をより低いものとする回避的傾向がみられ,これは不安が生じる事柄から距離をとるという適応的なあり方の一つと考えられた。また,経験者全体に自分を抑えて他者に尽くす性格特性がみられたことと考え合わせると,経験者自身が心理的苦痛を訴えにくく,自らケアを求めにくいと推測されるため,周りがそれをくみ取り,能動的で且つ経験者に受け入れられやすい関わり(心理ケア)が必要となる。小児がん経験者の心理的特徴にあった心理ケアを工夫する必要性が示唆された。 今後の課題としては,他疾患や健常対象者との比較検討及びより具体的な心理ケアを検討するための事例研究が挙げられる。
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