研究課題/領域番号 |
23653214
|
研究機関 | 関西国際大学 |
研究代表者 |
中山 誠 関西国際大学, 人間科学部, 教授 (60554988)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 虚偽検出 / SCR / CIT |
研究概要 |
Concealed Information Test(以下CIT)における裁決項目への生理的変化は、虚偽の返答ではなく、有意刺激が低頻度で呈示されることに依存して生起すると考えられている。しかしながら、刺激の有意性と低頻度呈示のいずれが、より重要であるのかという点に関して明確にされていない。また、CITは、実務場面にしろ、実験事態にしろ、「いいえ」という同じ返答を繰り返す点でひじょうに単調で受動的になりやすく、覚醒水準が低下しやすい。これに対して、Furedy, Davis & Gyrevich,(1988)が考案したdiffrential deception paradigm(以下DDP)は、20の質問に対し、虚偽と真実の返答を自由におこなう事態であるため、ヒトが日常場面でウソをつく状況に近い状態になり、実験参加者は能動的に取り組むことになる。しかしながら、DDPは質問数が多く、実験参加者が虚偽の返答内容を保持することの負担が大きく、本来の課題である実験者を欺くことに集中できていない可能性がある。そこで、本研究では、CITのように裁決項目を低頻度で呈示する効果をDDPで検討するために、質問数を大幅に減らした上で、虚偽返答の頻度の効果を検討するために以下の実験を実施した。 その結果、SCRについて、返答内容(真偽)と群(自由・制限返答)に関する2要因の分散分析を実施したところ、、返答内容の主効果(F(1/43)=34.32 p<.001)ならびに返答内容と群の交互作用(F(1/43)=6.71 p<.05)が有意であった。すなわち、自由返答群に比べて制限返答群では返答の真偽に対するSCRの差は増大することを示しており、低頻度でウソをつく場合には、検出が容易になることが明らかにされた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ処理プログラム改良の問題から、実験の順序が多少変わったものの、研究は順調に進行している 今年度は末梢指標を用いた真偽判断を、実験参加者60名程度でおこなう予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
特定の命題を示し、真偽判断をおこなわせる事態で、生理指標を測定する。「ペンギンは鳥類である」「クジラはほ乳類ではない」「ニューヨークはアメリカの首都である」「ボンはドイツの首都ではない」・・・などの命題を呈示し、真の命題に「真」、偽の命題に「偽」のキープレスをおこなわせる条件(真実条件)と、真の命題に対し「偽」、偽の命題に対し「真」のキープレスをさせて(虚偽条件)、情報処理負荷が一過性の生理反応に及ぼす影響と、持続的水準での覚醒レベルを測定する。 真実を答える群ではありのままを述べるので、特別な情報処理活動をおこなう必要がない。たとえば、この実験を日常場面に置き換えると、ウソの応答をおこなう群では、たとえば「実際にいた場所」を隠蔽するために、「いなかった場所」に置き換え、「その時間帯に実際にあっていた相手」を「別の相手」に置き換えて答える必要があるため、緊張感も高く、高次の精神活動を必要とする。そこで、虚偽返答群では真実返答群では、実験に臨む心理的構えに緊張感が伴うために高い心拍水準(1分間に100拍)を維持しながら、一方で、質問に対する心拍は返答前に比べて返答後、一時的に2-3拍程度、低下することが予測される。 このような基礎研究に続いて、さらにより一般的な場面での虚偽検出の実験的研究をおこなう予定である。 実験1を実施予定
|
次年度の研究費の使用計画 |
実験実施のための、ソフトウエアの購入(あるいは改造)費用、使い捨て電極などの消耗品の購入、実験参加者への謝金にあてる。また、学会参加の参加費、交通・宿泊費にあてる予定である。
|