本調査ではまず、渡航前から帰国後までの邦人海外渡航者のメンタルヘルスサービスの需要及び課題を探索的に明らかにすることを目的とし海外進出をしている大手事業場を対象に半構造化面接を行い、現状や抱えている問題、さらに専門機関に求めるサービスについて情報を得た。次に、サービスを受ける側である邦人海外渡航者に対しても半構造化面接を行い、サービスの需要及び抱えている心理的不安等を探索的に明らかした。これらの聞き取り調査から、今後海外へ渡航する邦人のメンタルヘルス問題の発症予防から早期危機介入、再発防止について検討していく上で重要な見解を得られたと考える。 さらに、邦人海外渡航者へ向けた簡易版啓発教育冊子『海外滞在中のこころの健康 快適な海外生活を送るために』を作成した。これまで海外へ渡航する邦人に向けたメンタルヘルスに関する啓発冊子はあまり作成されておらず、渡航前や滞在中に気軽に読むことができ、メンタルヘルスへの一次予防〜二次予防として活用できることを目的として作成した。 平成24年度は作成した簡易版啓発教育冊子の有用性や情報伝達の手段について、これから長期間(3ヵ月)に渡り海外へ渡航する邦人を対象にアンケート調査を行った。海外へ渡航する邦人にとってメンタルヘルスに関する情報は少なく、このような冊子は有用であると考える。アンケート調査からは、今後、冊子を改定するにあたり必要と考える意見等が得られた。その他にも渡航に際する不安及び、こころの健康に関する不安についても記載してもらい、メンタルヘルスサービスの需要についても調査を行った。また、平成23年度から行っていた、事業場への面接調査から得られた見解を多文化間精神医学会にて発表した。
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