本研究は、遺伝子改変マウスや局所脳損傷を施したマウスを用いて、マウス求愛歌の特に時系列がどのように神経制御されているのかを明らかにすることである。初年度に聴性誘発電位の記録手法を確立し、さらに遺伝子改変マウス(カドヘリン6ノックアウトおよびメラトニン合成ノックイン)の入手について他研究機関と協力体制を築いた。これをもとに、次年度には本格的なデータ取得を進めた。 まず、マウス求愛歌が動機付けによりどのように制御されているのかを知るため、扁桃体を全損傷した場合の歌の変容について調べた。そのようなマウスでもメスマウスへのにおい嗅ぎ行動、つけ回し行動を見せたが、マウンティングに至らないケースが多かった。求愛歌のうち複雑な構造を持った歌節が脱落し、単純な歌節しか残らないことが多かった。このことから、動機付けの変化によって歌構造が変化することが示された。 現在さらに、カドヘリン6ノックアウトマウスとメラトニン合成ノックインマウスについて歌の構造と聴覚の対応関係について検討を続けている。これらのマウスで歌と聴覚に変異が見られるのであれば、それに対応する脳構造を同定したいと考えている。
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