研究課題/領域番号 |
23653221
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横澤 一彦 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (20311649)
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キーワード | 視触覚相互作用 / ラバーハンド錯覚 / 認知心理学 / 情報統合 / 高次視覚 |
研究概要 |
ラバーハンド錯覚生起時に、所有感を強く感じる条件では,その手に乗せられた物体の見た目によって,感じる温度が有意に変化したが,所有感を感じない状況では,見た目の影響はなかった。身体所有感が、視覚と温度感覚の相互作用にとって,重要な意味を持つことを初めて示した重要な結果であり,PLoS One誌に論文として採録された。 ラバーハンド錯覚だけでなく、安定した身体所有感覚を保持するためには,様々な感覚情報同士の一貫性が重要な手掛かりとなる。たとえば、被験者の後姿をビデオカメラで映した映像をヘッドマウントディスプレイによってフィードバックしながら,同期した触覚刺激を与えると,まるで幽体離脱のような感覚が得られる。 幽体離脱感覚が生起する場合でも,局所的な刺激を用いる場合と,大局的な刺激を用いる場合とで,錯覚の質が異なるか否かを検討した。大局的な触覚刺激として,扇風機の風を,視覚刺激として,送風を行う扇風機の映像を用いた。 先行研究で得られた錯覚とは異なる種類の錯覚が生じた。参加者に対して送風を行う扇風機と,映像の中の扇風機に由来する視触覚情報が,同期条件において統合されていたが、先行研究で見られたような身体定位の錯覚は,明確には示されなかった。局所的な刺激と,大局的な刺激を用いた場合とで,異なる種類の錯覚が生じることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画通り,幽体離脱の実験研究を開始することができたばかりではなく、これまで国内外の学会で発表してきたラバーハンド錯覚に関する研究をPLoS One誌に発表したところ,多くの新聞報道(朝日新聞,毎日新聞、電気新聞、科学新聞など)やテレビニュース(NHK、日本テレビ)として取り上げられた。認知心理学に関わる研究成果を社会に分かりやすく発信できたことが、当初の計画以上の進展である。
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今後の研究の推進方策 |
24年度に得られた研究成果を学術論文化するとともに、ラバーハンド錯覚と幽体離脱のさらなる実験に、生理指標を取り入れ、ラバーハンド錯覚と幽体離脱という主観的な体験を、客観的にデータ化することを試みる。関連研究でも使われている、皮膚コンダクタンスが生理指標の候補であり、すでにQセンサーという装置を導入し、予備的な測定を進めているので、本実験への導入を本格化させたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
ラバーハンド錯覚や幽体離脱実験に使用する生理指標を測定させるための装置を充実させ,実験参加者に長時間に及ぶ拘束が伴う場合には、適切な謝金を支払う予定である。 国際会議発表や国内会議発表を行う旅費や、積極的に学術論文として研究成果をまとめるための校閲や投稿料などに使用する。
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