研究課題/領域番号 |
23653221
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横澤 一彦 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (20311649)
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キーワード | 視触覚相互作用 / 統合的認知 / ラバーハンド錯覚 / 高次視覚 / 幽体離脱体験 |
研究概要 |
計画に従い、ラバーハンド錯覚の応用として、幽体離脱体験の研究に取り組んだ。Ehrsson (2007)の幽体離脱研究は、ヘッドマウントディスプレイを利用することにより、従来のラバーハンド錯覚実験のような視覚情報呈示の制約をはずすことができ、腕以外の部位の触覚刺激により、結果的に幽体離脱体験を実現する画期的な研究であった。このような先行研究を踏まえ、ヘッドマウントディスプレイやビデオカメラなどの3次元の映像呈示装置などを組み合わせた実験装置群を整え、視触覚相互作用による自分自身のボディイメージの誤定位現象として、2つの幽体離脱体験の実験研究に取り組んだ。1つは触覚刺激の操作であり、もう1つは視覚刺激の操作である。まず、先行研究の触覚刺激が局所的であったので、それを大域的な触覚刺激で同様の効果が得られるかどうかを調べた。すなわち、大域的な触覚刺激として、風刺激を使用した結果、現象として減弱するものの、幽体離脱体験の生起は確認できた。次に、視覚刺激の操作として、情景の仰角の効果を調べた。座位でヘッドマウントディスプレイを装着する実験において、ヘッドマウントディスプレイに呈示する情景の仰角を操作し、幽体離脱体験の生起と身体の傾斜知覚との関係を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
触覚刺激の操作と視覚刺激の操作という、2つの幽体離脱体験の実験研究に取り組んだ。風刺激を使用した大域的な触覚刺激で幽体離脱体験が得られるかどうかを調べ、現象として減弱するものの、幽体離脱体験の生起は確認できたので、この成果を国際会議で発表した。次に、ヘッドマウントディスプレイに呈示する情景の仰角を操作し、幽体離脱体験の生起とボディイメージの傾斜知覚との関係を明らかにしたが、姿勢によるボディイメージの違いについて、実験結果の解釈と考察が残されている。
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今後の研究の推進方策 |
補助事業期間を延長し、新たに得られた研究成果の解釈と考察を進め、学会での発表や、論文化作業を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
ラバーハンド錯覚の応用として、ヘッドマウントディスプレイを利用することにより、従来のラバーハンド錯覚実験のような視覚情報呈示の制約をはずすことができ、腕以外の部位の触覚刺激により、幽体離脱体験を実現し、視触覚相互作用によるボディイメージの誤定位現象に取り組んできたが、姿勢によるボディイメージの違いについての実験実施を優先したので、研究成果の発表を次年度に延期した。 新たに得られた研究成果の国内外での発表や、論文化作業に必要な経費として使用する。
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