計画最終年度は、ラバーハンド錯覚の応用として、引き続き幽体離脱体験の研究に取り組み、視覚情報の操作として、座位でヘッドマウントディスプレイを装着する実験において、情景の仰角を操作した。幽体離脱体験の生起と身体の傾斜知覚との関連を詳細に分析した。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果としては、ラバーハンド錯覚生起時に、所有感を強く感じる条件では,その手に乗せられた物体の見た目によって,感じる温度が有意に変化するが,所有感を感じない状況では,見た目の影響がないことを突き止めたことが大きな成果となった。その成果は、PLoS One誌に論文として採録され、多くの新聞報道(朝日新聞,毎日新聞、電気新聞、科学新聞など)やテレビニュース(NHK、日本テレビ)として取り上げられた。認知心理学に関わる研究成果を社会に分かりやすく発信できた。また、大局的な触覚刺激や仰角の操作で、幽体離脱感覚を生起させることは困難であり、先行研究で見られたような身体定位の錯覚は,局所的な刺激が必要であることを明らかにした。
|