研究課題/領域番号 |
23653225
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中道 正之 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60183886)
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キーワード | ニホンザル / 超高齢メス / 高齢オス |
研究概要 |
昨年度と同様に、嵐山ニホンザル集団(京都市)において、25歳以上の超高齢ニホンザルメス17頭(最高齢、33歳)の追跡観察を実施するとともに、25歳から30歳までの中心部高齢オス4頭の追跡観察を実施し、以下のように、メスについては昨年度の結果を確認するとともに、オスについても新たな事実を明らかにした。25歳から32歳の超高齢期のメスもオスも移動や休息の身体活動性については、年齢による差異は関係なく、個体ごとに大きく異なる傾向があった。つまり、このような超高齢期になると、一般的な活動性は年齢との相関が見いだせず、むしろ30歳を超える高齢でも比較的活動的な個体がいる一方で、25歳過ぎでも著しく活動性が衰退している個体がいるというような個体差が顕著となっていた。 高齢のオスは非交尾期の8-9月の活動性は成体期のオスよりも明瞭に低いものであったが、10月以降の交尾期になると、身体活動性が高まり、さらにメスとの交尾行動も見られるようになった。つまり、25歳を超えるニホンザルとしては極めて高齢なオスであっても、交尾期においては、その活動性が一時的に高まり、交尾、射精にまで至ることが確認できた。 昨年度と同様に、嵐山集団と比較するために、勝山集団(岡山県真庭市)のメスの観察も実施し、昨年と同様の傾向が見いだされた。5歳から25歳までのどの年齢層のメスでも、高順位メスでは、加齢に関係なく、毛づくろいを受けていたが、低順位メスでは、高齢化するにしたがって、非血縁雌から受ける毛づくろいが少なくなっていた。 勝山集団ではおとな同士の1回の毛づくろいの持続時間が30分以上続くことは極めて珍しいが、嵐山集団では多くのペアで30分を超える長時間の毛づくろいが観察された。この違いが超高齢メスの存在と関係するかどうかは今後の分析と次年度のデータ追加によって考察できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的は、20歳以上の老齢メスの割合がメスの30%に達し、さらに、30歳を超える超高齢メスも数頭生存している嵐山ニホンザル集団(京都市)と老齢メスの割合が7%で、しかも最高齢のメスが25歳である勝山ニホンザル集団(岡山県真庭市)のメスの行動を比較し、超高齢メスが多く、かつ未成体が少ない嵐山集団の社会集団としての特徴が、老齢個体率が一般的な勝山集団と著しく異なるかどうかを検討することであった。 23,24年度の継続研究から、25歳を超える超高齢メスの一般活動性や社会性は年齢との相関はなく、25歳でもそれらの活動性が低い個体もおれば、30歳を超えても比較的活発な個体もいるように、個体差が著しくなることが確認できている。これらは当初から予想されたもので、斬新なものではないが、ニホンザルメスの社会行動において極めて重要な意味を持つ社会的毛づくろいにおいて、その持続時間が、勝山集団では比較的短いのに対して、嵐山集団では30分以上も続く長時間の社会的毛づくろいが稀ではないことが明らかとなった。これが少子高齢化に伴った「多数の超高齢メスの存在、あるいは子供の少なささ」と関係するかどうかは今後の分析とデータの追加にかかっていると思われる。 24年度においては、当初の研究目的にはなかった超高齢オスの行動観察も実施し、非交尾期の活動性の低い状態から、交尾期には一気に性行動も含めて社会活動が高まることが確認できたことは、予想外の収穫であった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの2年間に行ってきた嵐山集団と勝山集団での行動観察を、最終年度の25年度も、同様に継続して行う。そして、合計3年間のデータの基礎的な分析を開始し、平成25年度以降の学会発表と論文執筆の目途をつけることが、当初に計画していた最終年度の予定であり、これを着実に実行する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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