研究課題/領域番号 |
23653226
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
苧阪 満里子 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (70144300)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ユーモア / 報酬系 / ワーキングメモリ / 中央実行系 / fMRI |
研究概要 |
本研究は、ユーモアの理解とその脳内基盤を明らかにすることを目的とした。ユーモア理解は、ポジティブな情動を高め、高次認知処理を促進すると考えられる。そのため、ユーモア理解の脳内機構を明らかにすることは、認知処理過程の脳内機構、さらには認知処理過程において重要な役割を果たすワーキングメモリの脳内メカニズムの解明にも重要であると考えられる。23年度では、従来のユーモア研究では1場面の画像などを用いて検討されてきたのに対して、4コマ漫画を用いて、文脈を理解する認知過程においてニューモアがいつ、どのように生起するのかを検討した。まず予備調査として、4コマ漫画の面白さの評定を行なった。この評定値をもとにした高低2種類の漫画を刺激材料として、面白さがワーキングメモリ遂行に及ぼす効果を検討した。この結果、面白さが高い漫画ではワーキングメモリの遂行が高い結果が得られた。このように、面白さが認知過程に及ぼす効果が検証されたため、さらにその脳内機構を探索する検討を行なった。脳画像測定にはfMRIを用いて、行動実験と同様に4コマ漫画を継時的に提示して、脳の活動領域を測定した。その結果、1コマ目、2コマ目の画像に伴う脳活動には、主に視覚領域を中心とした活動が認められたが、3コマ目、4コマ目の画像提示では、そうした領域の活動に加えて、異なる領域の活動が認められた。特に4コマ目の画像では、側頭頭頂接合領域(TPJ)や上側頭葉(STS)の活動増強が顕著となった。この結果から、このような領域がユーモアの理解と関連することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
23年度は、予定していた4コマ漫画を用いて、そのワーキングメモリ課題遂行に伴う行動実験およびfMRIを用いた脳イメージング実験ともに進めることができた。行動実験は、実験参加者の協力を得て、順調に実験を終えることができた。また、分析に関しても、実験協力者の援助を得て、終了することができた。本研究の途中成果については、23年のSociety for Neuroscienceの大会において、発表することができた。このように、実験に際しては、予想外の問題が発生することもなく順調に進展している。以上の点を踏まえて、(1)当初の計画以上に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は、23年度の成果をもとに、研究を一層進める計画である。fMRIを用いた脳画像測定では、4コマ漫画の面白さの評定にもとづく高低2種類の漫画刺激に着目して、それぞれの漫画が引き起こす脳の活動の差を検討する計画である。脳活動は、1、2、3、4コマ目ごとに比較する。まず、面白さの評定による脳活動の差異が、継時的に提示される4コマ漫画の中で、どの時点で明瞭になるのかについて、コマごとに比較検討する。さらに、3コマ目、4コマ目で活動が認められたTPJやSTSの活動増強が、漫画の面白さの程度により、どのように変化するのかを調べる。こうした実験分析を中心として、4コマ漫画という、一連の刺激の理解のなかで、ユーモアの理解がかかわる過程を、明らかにする。このような計画をもとに、24年度では、ユーモアの理解とその脳内基盤の解明を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度は物品購入を行わずに旅費に充当した以外は、ほぼ計画通りに予算執行し、残額は51714円となった。来年度の申請予算110万円と合わせた合計約115万円の使途であるが「物品費」に25万円、研究成果発表旅費等として「旅費」に30万円、実験参加者や学生アルバイトに対する謝金として「人件費・謝金」に20万円、fMRI施設使用料や英文校正代金として「その他」に40万円を支出予定である。
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