ユーモア理解は、ポジティブな情動を高め、人間の高次な認知処理を促進すると考えられる。本研究では、ユーモア理解の脳内機構を明らかにすることにより、認知処理過程の脳内機構、さらには認知処理過程において重要な役割を果たす注意制御にかかわる脳内メカニズムの解明をはかった。 23年度では主に機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用い、4コマ漫画の文脈を理解する認知過程において、ユーモアがどの時点でどのように生起するのかを検討した。 24年度にはさらに、行動実験による検討も加え、ユーモアが記憶に及ぼす影響を検討した。ここでは、特に、人間の認知機能に重要な役割を果たすワーキングメモリに及ぼす影響を探索した。その結果、面白さが高いと判断された4コマ漫画では、再認が言語、画像であってもともにワーキングメモリの遂行が高い結果が得られた。このように、面白さが認知過程に及ぼす効果が検証されたため、さらにその脳内機構を探索する検討を行なった。fMRIを用いた実験では参加者人数を重ねたうえで、4コマ漫画を継時的に提示して、脳の活動領域を測定した。その結果、漫画のストーリが展開する3コマ目において、右の上側頭溝、左の側頭・頭頂結合部、両側の側頭極の活動増強が認められ、4コマ目の画像提示では、そうした領域の活動に加えて、下前頭回、内側前頭回領域の活動増強が認められた。また、面白さの評定が高く評定された漫画は、低い漫画に比較して、両側の小脳の活動増強が認められた。 このような結果から、ユーモア理解は、側頭葉、側頭・頭頂結合部と内側前頭部の活動がかかわる知見を得た。これらの領域は、自己認知、自己モニターリングの制御にも関連することから、両過程の関連が推察できる。さらに、面白さの判断には、小脳がかかわることが分かった。加えて、こうした領域は両側にまたがっている知見も得られた。
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