研究課題/領域番号 |
23653229
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研究機関 | 埼玉工業大学 |
研究代表者 |
大塚 聡子 埼玉工業大学, 人間社会学部, 准教授 (90348293)
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キーワード | 視聴覚統合 / 閾下知覚 / 聴覚 / 空間知覚 |
研究概要 |
無意識的な聴覚刺激提示方法の開発を行い、また、1次元・2次元的な空間特性について無意識的な視聴覚相互作用に関する実験的検討を行った。刺激提示法については、刺激強度の操作とマスキングにより、単純接触効果とプライミング手法にて無意識的処理を示す証拠を得ることができた。ただし、視聴覚相互作用についての実験的証拠については、実験手法による結果の違いや、視聴覚相互作用におけるプライムの効果に関して様相間の非対称性が認められた。これはアーティファクトの可能性を含む重要な問題であり、今後解決すべき課題となる。 24年度は、2次元空間特性について、視覚または聴覚プライムが他様相ターゲットへの反応に及ぼす影響について検討した。聴覚刺激は、両耳間強度差により水平方向への移動が感じられるものを用いている。結果として、視覚プライムについては小さいながら肯定的な効果を示す証拠を得たが、聴覚プライムについては一貫した効果が認められていない。この非対称性は、聴覚刺激の提示方法の妥当性、視聴覚間の最適刺激強度の違い、あるいは様相間の寄与強度の違いといった要因が考えられる。そこで2次元的な聴覚刺激の無意識的処理の実証を試みたところ、提示方法はほぼ妥当と判断できる結果となった。したがって、視聴覚非対称性については、主観的強度を考慮した刺激による検討が必要となると感がられる。 24年度はまた、上記の内容に並行して1次元空間特性の検討を始め、無意識的な聴覚処理を示す手続きを確認した。一方、視聴覚相互作用については、2次元特性におけるものと同様の非対称性が認められ、実験的検討が必要と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画は全般的に予定通りに進行している。 当初の研究計画とは異なる構成・順序で実験的検討を進めているが、その理由は、実験手法の基礎となる刺激提示手続きの確立と妥当性の確認とを前倒ししたことである。刺激提示手続きの検討は問題なく進んでおり、また、研究作業の実施速度も低下していないため、全体的な研究進行の遅れはないと考えている。ただし、24年度には様相間効果の非対称性という新たな問題が浮かび上がり、この点を検討する必要が生起したと判断している。この問題は、無意識的な知覚様相間相互作用という新しい現象を扱う中で、ある程度必然的に起きるものともいえる。この点を検討することで相互作用に関する基礎的なデータを累積できるとも考えられるので、本研究課題で検討を進めたいと考えている。 現時点で残りの課題である3次元空間特性の検討に早期に着手することは、現実的に可能である。これは、2次元空間に関する検討の中で運動知覚の問題点を早期に整理できたことによる。3次元特性の検討を実施することで、本課題の研究期間で予定していた内容項目を一通り扱うことになる。また、上記の非対称性の問題を並行して取り扱う予定であるが、データの収集を優先させることで研究期間内にその検討を実施することが可能と考える。 これらの内容を総合すると、研究課題の全般的進行についてはほぼ予定通りのペースで進行していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の25年度は、当初の研究計画の内容に加えて、前年度までに浮上した問題点の実験的検討を行う予定である。23・24年度には予定していた研究課題の実施順序を若干変更したが、これは研究内容を変更するものではないため、今後も研究計画の大幅な変更は必要ない。 具体的には、検討すべき最後の項目である3次元空間特性についての実験的検討を行う予定である。両耳刺激強度を操作することにより、奥行き(手前-奥)方向に移動する聴覚刺激を作成し、無意識的な処理の実証をめざす。また、両眼網膜像差により同様に奥行き方向に移動する視覚刺激を作成して聴覚刺激と組み合わせ、視聴覚様相間の相互作用について検討する。1次元・2次元特性に関する検討手順と同様に、まずは視覚プライムから聴覚反応への影響、続いて聴覚プライムから視覚反応への影響を調べる。 また、次元を問わず、視聴覚様相間の効果の非対称性の問題点に関する検討を行う。この点は研究を実施する中で抽出された問題であり、当初予定していたものではない。しかし、本研究課題に関連する重要な視点であるので、慎重に取り組みたい。この実験的検討を加えて実施するため、25年度は実験的検討を優先して進める予定である。多次元にわたる輻輳的な結果が得られれば、それらに基づき、無意識的な視聴覚相互作用を空間的処理の側面から検討するという、本研究課題の総括が可能になる。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度の研究費予算は、おもに、論文投稿関連費、研究成果報告費、および人件費としての執行を予定している。 論文投稿関連費については、無意識的視聴覚情報処理に関する研究成果を英文誌上報告するために、英文校正ならびに論文投稿関連費用が必要である。 研究成果報告については、2件の国内学会(日本基礎心理学会大会、2013年12月、金沢市。日本視覚学会冬季大会、2014年1月、工学院大学(予定)。いずれも発表募集開始前)における成果発表を予定している。そのための費用として研究費を使用したい。 また、心理学実験を通してデータ収集を行うため、実験協力者と実験参加者を募りたい。これらの協力者を確保するために、研究費を使用する予定である。 実験装置については設営がほぼ完了しており、今後は装置の増設・改修は必要としない。
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