研究課題/領域番号 |
23653246
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小野田 正利 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60169349)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 保護者対応 / ロールプレイング / エコロジカルマップ / 学校トラブル / ワークショップ |
研究概要 |
1.現代の学校にとって、大きな問題となっている保護者と学校(教師)の間のトラブルの早期解決と未然防止を目的とした、教職員の力量形成のためのワークショップ・プログラムを2つ開発した。2.一つは、ロールプレイング方式のものであり、教師が保護者の立場(役割を演じる)になってみると見えてくる、学校側の陥りやすい過ちや態度に気づかせるものである。学校の行動特性とその修正をおこなうことで、トラブルを大きくさせない力量形成を目指した。3.二つめは、福祉学や家族看護学の領域で用いられているジェノグラムやエコロジカルマップを、保護者対応問題に変形して応用させたものである。子どもの問題行動から発展して、それがやがて保護者対応問題に変化することが多くあるが、その代表的事例を、登場人物ごとの細かな情報に分類したシートを作成した。それを共同作業で組み立てていくことで、問題事案の見立て(アセスメント)と解決の方策(プランニング)を、少人数のグループで共同していく問題解決能力を養うものとした。4.昨年の6月から今年の3月まで、全国各地の19箇所から招聘を受けて、この2つを用いたワークショップを開催し、その効果の検証を重ねてきたが、どの会場においても極めて高い評価を得ることができた。これらのワークショップへの参加教員数は、のべ700人にのぼっている。5.研究計画の中では、分かりやすい手引きとなるようなビデオ(DVD)制作を構想していたが、この研究に着手した段階で、日本経済新聞出版社から監修の依頼を受け、上記のワークショップ実践と平行して作業を進めていった。この成果は3月になってDVD教材「教員のための保護者対応力向上シリーズ」(全6巻)として結実し、刊行された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.大きな理由は、開発した2つのワークショップを、実際に試行する機会が豊富に存在していたことである。すでに前年度の段階から、研修講師招聘の予約が多くあり、単なる講話ではない、具体的な力量形成につながる保護者対応のノウハウを、全国の多くの教育委員会や教育センター、あるいは学校が熱望していたことがある。2.2つのワークショップのうち、ロールプレイングはかなり以前からおこなって、改良を重ね、一定の成果があるものと確信できていたが、新たに開発したエコロジカルマップづくりを、6人1グループで共同しておこなう方式は、極めて評価が高く、その方式をいくつもの機関や学校が模倣することを申し出ている。3.こういったプログラム開発と平行して、当初は2・3年目に実施しようと構想していた分かりやすいビデオ教材づくりが、日本経済新聞出版社との共同事業が入ったことで、プロの映像スタッフのもとで、極めて完成度の高い、汎用性のあるDVD教材が出来上がったことも極めて大きかった。
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今後の研究の推進方策 |
1.2つのワークショップの完成度を高め、校種別に、保育園・幼稚園、小学校、中学校、高校といった段階での固有の保護者対応問題に即した事例のプログラム開発を目指す必要がある。2.このために、2つのワークショッププログラムについて多くの試行の場が必要であるが、幸いなことにすでに、学校の夏季休業期間を利用しての研修会への招聘が10箇所以上あり、こういった場で参加者に対するアンケートによる効果測定と改善点の収集を目指す。3.これまでは個別の場でワークシートを配布してきたが、一つのまとまった冊子のような形で体系化し、利便性を高めて、どの学校や教育センターでも活用可能なキットとして頒布する方向を目指す。4.エコロジカルマップ、ロールプレイ以外にも、心理学・福祉学・教育学などの多様なワークショップの方法論から学び、保護者対応の教職員のスキルアップにつなげられる方法を探究する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.日本経済新聞出版社からのDVD制作の事業が持ち込まれたため、当初の計画を一部変更していくことになり、必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込み額と執行額は異なったが、3年間のトータルの研究計画には変更はない。2.発刊されたDVDを活用しながらの、ワークショッププログラムの開発をおこなうほか、試行現場の教職員の協力を得ながら、保護者対応問題の解決に必要な力量の分析をおこない、ワークショッププログラムの完成度を高めるための研究をおこなう。3.最終年度に予定している、冊子体としてのワークショッププログラムの試作版の作成をおこなう。4.申請者自身の別の科研費による研究組織(新・学校保護者関係研究会)に加わっている医学・心理学・福祉学・法律学・危機管理学などの専門研究者からのレビューを受ける。
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