研究課題/領域番号 |
23653248
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
片山 美香 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (00320052)
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キーワード | 初任保育者 / 幼児 / 家庭支援 |
研究概要 |
本研究の目的は,①初任保育者が家庭との連携の必要性を認識しながらも十分な連携が図れないため,子どもの保育に行き詰まりを感じている事例を収集して,原因分析を行うこと,②初任保育者同士が所属園の枠を離れて,事例検討等を行う相互研修会をもってピア・サポート関係をつくり,相互に実現可能な対応の仕方を見いだすプロセスについて検討することを通じて,③初任保育者のための“子どもと家族をつなぐ心理学的研修プログラム”を構築することである。 この目的に照らして,今年度は初任保育者を対象としたアンケート調査を実施した。その結果,37人分のデータが回収され,保育者の子どもの見取りと保護者のそれとのズレが生じている際に連携の難しさを感じることが多いことが示された。とくに,子どもに発達障害等の特別な課題がある場合に,そのズレが大きくなる場合があること,子どもの障害の可能性を保育者がどう伝えるべきか,通常の課題と違ってデリケートな問題を含むため,保護者への状態の説明の仕方など,多くの配慮と対応力を要求されることが初任にとってはより難しさを感じる要因となっていることが明らかになった。 また,②の目的に沿って,10名の初任保育者にグループインタビュー法を用いて,各自の実践における家庭との連携の難しさについて自由に回答してもらったところ,所属園の違いや経験年数の違いによって,共通の難しさと異質な難しさを抱えている実態が明らかになった。また,経験年数が短いほど,保護者の言動に一喜一憂して対応不能に陥ること,また,保護者から自分自身の力量を評価されていると捉えやすいことが示された。一方,経験が積み重ねられることによって,保育者としてどのような目的で連携を必要としているのかというねらいを明確にもち,そのために具体的な連携をどのように図ればよいのかを考える力量が身につくことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的にはさまざまな文献を収集し,この分野における課題の整理を行っているところであるが,このことに関しては順調に進展している。ただし,収集した文献を精読する時間が不十分であるため,当該分野における文献展望の論文執筆は行えていない状況である。 また,昨夏,初任保育者10名を被調査者として,グループインタビュー法を用い,それぞれの保育実践における家庭支援の現状と課題について調査した。現在,収集したデータを整理しているところであるが,こちらについても十分なデータ分析を行ったうえで論文執筆を行うには至っていない。 本研究では,保育者による家庭支援,保護者支援の必要性が叫ばれている昨今,初任保育者がどのような研修を行うことが初任であっても可能な保護者支援をすることができるのか,そのプログラムの構築を試みることを目標に置いているが,現時点では,初任保育者の実情を把握するに留まっている。
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今後の研究の推進方策 |
昨夏,グループインタビューに協力してもらった初任保育者を中心に,家庭との連携の必要性を認識しながらも効果的な連携ができないケースについて継続的に記録を取り続けてもらい,夏にその経過を参加者相互で共有し,事例の検討と連携の実践への手掛かりを得る。 また,クラスだよりは保護者と紙面を通じて連携を図る効果的な媒体であることを考慮し,研究協力者からクラスだよりを収集し,内容分析を試みる。 さらに,昨年度の調査より,継続的な保護者への情報発信として連絡帳のやりとりや,些細な保育上の出来事を保護者に伝達することの重要性が見出された。そこで,本年度は,日々の連絡帳でのやりとりや保護者に保育上の出来事を伝える掲示板の活用の実際,保護者との送迎時を中心としたやり取りの積み重ねの質的データを収集し,初任保育者がどのような情報を提示し,そこからどのような反応を得て,保育実践に生かしているかについて調査し,初任保育者でも可能な,効果的な園と家庭の連携の方法について検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
文献収集のための図書購入経費および複写に要する費用を使用する予定で得ある。 また,今年度は,初任者がどのように家庭と連携しているか,実践の場に研究者が訪れ,インタビューデータ等を収集するため,昨年度購入しなかった,データ整理用の携帯型のノートパソコンを備品として購入する予定である。 さらに,昨年度同様,初任保育者10名程度の協力を得て,家庭との連携に関する現況のグループインタビューを行って実態把握するとともに,さらに,昨年度と比較して,個人内でどのような変化が生じたかどうかを検討するため,昨年度の協力者に大学に来てもらうための交通費を支給する予定である。その際,学部生のアルバイトを雇用し,場所の設定やビデオやICレコーダーを用いたデータ収集に従事してもらうことも計画している。 今年度は,これまでの調査の結果をまとめて論文執筆し,学会誌に投稿予定であるため,研究成果投稿費も支出予定である。
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