研究課題/領域番号 |
23653248
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
片山 美香 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (00320052)
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キーワード | 初任保育者 / 保護者 / 困難感 / グループインタビュー |
研究概要 |
目的)本年度は昨年度の,就職後5年以内の初任保育者を対象としたグループインタビューを基盤として,同じく就職後5年以内の初任保育者に対して,保護者対応における難しさに関するグループインタビュー調査および質問紙調査を実施し,初任者の保護者対応力を向上させる研修プログラムのために必要な基礎的データの収集および分析を行った。 方法)グループインタビューは,2014年1月12日に3時間程度,24名を対象に実施した。「現在の保護者とのかかわりの現況」,「保護者とのかかわりの質を高めるための初任保育者の課題」についてインタビューを行った。また,グループインタビューで効果的に意見を述べてもらえるよう,インタビューの課題に関する意見を事前に記述してもらう事前調査を行うとともに,インタビューの効果を諮ること,および表明出来なかった意見を掬いあげることを目的として,記述式の質問紙調査を実施した。 結果および考察)事前の質問紙調査では,「保育者になったこと」,「クラスの子どもたちとのかかわり」については概ね肯定的に認知していることがわかった。しかしながら,「保護者とのかかわり」については,否定的な認知ではないものの,子どもとのかかわりに比して低値であった。保護者とのかかわりで力量のなさをかなり強く認識していることが示された。保護者から受ける相談に適宜応じることが出来ないことが力量のなさを痛感する体験となり,子育てに関する経験も知識も十分でないことを原因と考えていることが明らかになった。具体的な内容としては,トイレトレーニングの方法や食具の使い方や偏食への指導など,生活習慣の確立に関する内容に困難さを感じる場面が多いことが示された。また,特別な支援を要する子どもや病気への対応など,養成校で学修する保育者としての基本的な技術よりもより応用力を要する場面での対応に困難感を抱く実態が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りグループインタビューを実施することが出来た。 さらに,平成24年度の問題点を踏まえ,グループインタビューでの語りをより効果的に行うために,事前に自分の意見を構想することを目的とした事前調査および,調査対象者がグループインタビューという調査方法上,自身の考えを十分に表明し難いという問題点を改善するために自由記述式の事後調査を行うことを試みた。インタビューでは把握しきれない個々の省察を捉える事ができ,計画どおり順調に研究を進められていると判断できる。 しかしながら,成果を学会で発表することや論文にまとめることが予定どおり進められていないことが,「おおむね順調」との判断に至った理由である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の課題として,研究成果を学会で発表したり,研究論文として成果をまとめたりすることを第一の目標とする。 さらに,1年の経験を経た昨年度の調査対象者に追跡調査を行うことにより,どのような保育者としての成長が見られるかどうか,その成長がどのような要因によって達成されたかを明らかにする研究を推進する予定である。 また,本研究の最終年度を迎えにあたり,初任保育者の保護者対応力を向上させるための研修プログラムの開発,および保育者養成の段階でどのような学習内容を構築することが初任保育者の保護者対応の力量を向上させることにつながるのか,養成校での学修プログラムの試案の検討も進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査の実施が遅延したため,予定していた学会での研究発表や学会誌への投稿等が出来なかった。そのため,出張旅費,投稿費等の経費が残存することとなったことが,次年度の使用額が生じた理由である。 昨年度の調査研究の結果をまとめて,学会発表を行う予定であるため,出張旅費および学会参加費として使用する予定である。また,執筆論文の英文抄録の校閲を外部機関に委託する際に生じる経費として使用することも視野に入れている。
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