本研究では、求められる資質や能力の育成を重視した学校カリキュラムの在り方を展望する目的から、到達目標を明確にした教育課程基準の構成や示し方について検討を進めてきた。その結果、次の結論を得た。 1.教育課程基準における到達目標の示し方については、例えば、近年のフランスのように「共通知識技能」を定めて、教育課程基準の内容を示す例、「十大基本能力」を策定し、教育課程を各領域として構成する中華民国の例がある。また各学習領域に諸能力を横断的に位置づけるオーストラリアの教育課程基準の例、複数学年のステージごとに目標を示すイギリスの例がある。これらのタイプを目標と内容の関係の観点から比較すると、基準として目標は示すが、内容は具体的に示さず各学校に委ねるタイプと、内容は教科ではなく緩やかな領域として示すタイプなどに整理できる。 2.これらの整理を手掛かりに、教育課程基準の示し方について次のように類型化した。ア 学習指導要領の総則において、教科等の学習で共通に習得させる資質や能力を明示し、この共通目標と各教科等における目標との関連を明確にして示す方法。イ アに加え、各教科等の内容を示す場合、個々の内容の扱いにおいて習得させる資質や能力をより明確に示す方法。ウ 現行の学習指導要領の内容の示し方は、文章で示しているが、これを目標としての資質・能力と扱う内容の例を区別して示す方法。この場合、資質・能力と内容の示し方については、複数学年に渡って示すことが考えられる。エ 現行の学習指導要領の構成に加え、教科等横断的な資質や能力を育成する教科等や学年をより具体的に示す方法。これは全体計画の基礎的な枠組みを教育課程の基準として示す方法である。 現行の学習指導要領を漸次改善していく際には、これらの中でアとイの方法が現実的であると考えられる。
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