研究課題/領域番号 |
23653262
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大谷 尚 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (50128162)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 質的研究 / 質的研究方法論 / 質的データ / 質的データ分析 / ワークショップ / インタビュー / データ採取 / 認識論 |
研究概要 |
本年度は、3年間の研究を再設計した上で、(1) SCATを用いて分析するための個別インタビューの録音、(2) SCATのワークショップで使用する分析データを作成するためのメール・インタビュー、(3) 数人によるSCATの学習過程の録音、(4) 数人×3グループによるSCATの学習過程の録音・録画、の4種のデータ採取を行った.SCATの学習過程の分析のためにはまず、参加者集団にとって適切な分析データが必要がある.(2)はそのために特定の専門職集団のためのSCATの分析データを作成するためのデータ採取である.また、SCATの学習は通常、参加者を公募するワークショップで行うため、データ採取が困難である.そのために、(3)は某国立大学のある研究室の研究グループ、(4)は某機関に勤める専門職グループの、ともにクローズドな学習の機会を利用させて頂くことで、学習過程のデータ採取を可能とした. これらのデータを分析し、SCATによる質的データ分析の理解や習熟の促進要因と阻害要因の抽出を行った.また習得の全体的過程を参加者の相互作用に焦点化して分析した.それに基づき、この手法を活用し共有するためのマニュアル、学習プログラム、その他の教材(活用法のビデオ教材、活用例と事例集)、ワークショップガイド、自学者のためのe-learningシステム、情報の集約と提供のためのWEBサイトの開発と構築のための基礎資料を得た. また、質的データの分析と質的研究方法論全体におけるその意義や位置づけについて討論するために訪問予定であったトロント大学 The Wilson Centerのグループは、ヨーロッパ医学教育学会で質的研究手法のワークショップを開催しているため、そこでそのグループと交流を持ち、質的研究における認識論を含む、研究方法論全体についての包括的な情報交換、意見交換と、質的データ分析手法についての討論を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、大学の経営・管理的公務(教育学部附属学校長)が2年目であり、相当なエフォートが割かれたため、研究は遅れがちであると評価している.とくに、採取したデータの文字化が完了しておらず、録音・録画状態での分析は進めているが、文字化した状態での分析はあまり進んでいない. したがって、利用者からのフィードバックの収集や多様な専門領域に即した具体的活用法の検討は十分でなく、その結果、その習得過程の分析とそれを活用した各領域での活用例等を含むマニュアルの開発や、この手法を多様な領域の研究者間で共有するための情報公開を行う e-learning や WEBページのための基礎的データの収集を進めているものの、まだそれらのトータルな設計が完了していないため、それらの編集や立ち上げに到っていない.
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度に完了できなかった分析の諸点について精力的に分析を進める.それに基づいて、上記のマニュアルやWEBページなど、それを提供することでさらにフィードバックを得られるような情報公開手段の開発を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度からの採取データの文字化のため、データ採取のための新たなワークショップの開催とそのための講師(申請者とアシスタント)の旅費等、また、マニュアル類の開発と、とくに経費のかかるWEBページの開発に、主要な経費を使用する予定である.
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