研究課題/領域番号 |
23653262
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大谷 尚 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50128162)
|
キーワード | 質的研究 / 質的データ / 質的データ分析手法 / 質的研究方法論 / SCAT / ワークショップ |
研究概要 |
多様な領域で質的研究がなされるようになっている.しかしそこで必要とされる質的データの分析には、明示的な手続きを有し、小 規模のデータにも適用でき、大学院生等の初学者から経験ある研究者まで活用できる有効な方法がなかった. 本研究では、これらの問題を克服して申請者が2006年頃に開発し、その後発展させることで広範な研究分野で利用されてきているSC AT(Steps for Coding and Theorization)を,1利用者からのフィードバックを得ながら発展させ、2多様な専門領域に即した具体的 活用法を検討し、3同時にその習得過程の分析を行い、4各領域での活用例等を含むマニュアルとして開発し、4この手法を多様な領 域の研究者間で共有するためのシステムを開発することを目的としている. 2013年度には,前年度の採取データの分析を行うとともに,新たな数回のワークショップを,開催方法の改善を行いながら実施した .そこでは次の記録を採取・作成した.1 ワークショップ全体のビデオ撮影(映像記録). 2 各グループの分析過程の会話の録音・録 画(音声・映像記録)3 参加者へのインタビュー(音声記録). 4ワークショップ指導者の発話の録音(音声記録). 以上の記録はすべて文字化して分析し、SCATによる質的データ分析の理解や習熟の促進要因と阻害要因を抽出した.また習得の全体 的過程を参加者の相互作用に焦点化して分析した.それに基づき、この手法を活用し共有するためのマニュアル、学習プログラム、そ の他の教材(活用法のビデオ教材、活用例と事例集)、ワークショップガイド、自学者のためのe-learningシステム、情報の集約と提 供のためのWEBサイトの開発と構築のための基礎資料を得た. なお,本年度も,SCATを用いた論文がつぎつぎと発表されるため,それらの論文著者である研究者らにもインタビューを行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究が遅れているのは、研究者が2012年に附属学校校長に再選出され、その職に再任されたたためである.とくに、研究者の校長在任中、附属学校は、文科省からの3つの研究指定を同時に受けるとともに、全国中高一貫教育研究会の会長校をつとめている.また,名古屋大学のミッションに参画してのニューヨーク、ノースカロライナ、モンゴル等との新たな国際化活動につとめるととも、,愛知県内第2番目のユネスコスクールとして、県内のユネスコスクールのネットワークを形成し、その調整役に当たるなどの課題を創出し、それを達成した.また、校長在任中に獲得した国際バカロレア関係の文科省の研究助成は 2012年度-2014年度であり、その研究を継続しなくてはならないためである.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,これまで採取したデータの分析,いくつかのデータの新たな文字化,本研究のための数回のワークショップの開催とそこでのデータ採取,SCAT のWEBページの新規開設,e-learningシステムの開発と試行.SCATの使用者,指導者へのインタビュー,国際学会での質的データ分析手法に関する情報収集・発信・交流等を通して,本研究の目的を達成し、研究を総括する計画である.
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究期間中の附属学校長との3年間の兼務のために、研究遂行全体が遅れたためである. 現在再設計中のWEBページの完成.SCATを用いたこれまでの 160 ほどの研究と今後の研究におけるSCATの具体的な使用方法の調査等のための作業謝金として多くを支出する予定である.また、マニュアルの作成のためにも支出する.
|