研究課題/領域番号 |
23653275
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
東谷 護 成城大学, 文芸学部, 准教授 (10453656)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 生活綴方運動 / 恵那の教育 / 作文教育全国協議会 / 労音運動 / ポピュラー音楽 / 中津川(岐阜県) / 文化社会学 / 質的調査 |
研究概要 |
本研究の目的は「恵那の教育(生活綴方運動)」「映画『青い山脈』ロケ誘致」「労音運動」「全日本フォークジャンボリー」「フィールドフォーク」「恵那山みどりの会」といった異なる領域の文化実践が行われた岐阜県東濃地区を研究対象地として、上述の文化実践に対して「小学校教員」を補助線として系譜的に捉え、インタビュー調査を含む実証的研究によって、戦後日本の社会・文化的潮流との関係を視野に入れた東濃地域在住の小学校教員と地域住民との関わりを多角的に考察することである。 本年度は上記の調査研究の目的や方法、手順等を研究開始にあたって再確認した。その上で、文献、東濃地区の図書館、研究対象地の合併以前の市町村議会の議事録を含む公的資料、研究協力者からの情報提供に基づき、本格的な調査研究を開始するための予備調査を現地調査2回(5、6月)を含めて行った。その際、研究代表者がすでに2年間(2009~10年)、主に中津川で行ったインタビュー調査と収集した資料の再検討を行った。また、9月には京都文教大学鶴見和子文庫での生活綴方運動に関する資料の閲覧を行った。鶴見和子文庫については、書籍、論文以外の鶴見和子の手によるメモ書き等の一次資料については、現段階では公開されているアーカイブ化されたものはなかったため、資料閲覧による分析については今年度は残念ながら見送らざるを得なかった。これを除けば、先述した予備調査のおかげで、現時点での収集した資料の把握と資料分析は、個々の文化実践の分析にとどまらず、相互の関係を有機的につなぐ分析が出来たと言えよう。予備調査を踏まえた当事者へのインタビューを含む現地調査を4回(8、9、11月。ただし11月は2回。)行ったが、いずれも研究の発展につながる有意義なものであった。 東日本大震災の影響で、研究が予定より滞ってしまったため、研究業績の発信が出来なかった。次年度で補いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は「恵那の教育(生活綴方運動)」「映画・『青い山脈』ロケ誘致」「労音運動」「全日本フォークジャンボリー」「フィールドフォーク」「恵那山みどりの会」といった異なる領域の文化実践が行われた岐阜県東濃地区を研究対象地として、これらの異なる文化実践に対して「小学校教員」を補助線として系譜的に捉え、インタビュー調査を含む実証的研究によって、戦後日本の社会・文化的潮流との関係を視野に入れた東濃地域在住の小学校教員と地域住民との関わりを多角的に考察することを研究の目的としている。 本年度は、本研究開始前より継続してインタビューを含めて行ってきた研究調査によって、「労音運動」「全日本フォークジャンボリー」「フィールドフォーク」に関してほぼ全容を把握することが出来た。さらに上記にあげた他の文化実践のうち、「恵那の教育(生活綴方運動)」と「恵那山みどりの会」については、当事者への直接インタビューを含む研究調査も行うことが出来、本研究の目的の達成に向けて確実に研究が進められていると判断できるといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
音楽文化の実践に関わる調査、分析と比べると、「恵那の教育(生活綴方運動)」「映画・『青い山脈』ロケ誘致」に関わる文化実践の調査・分析が現時点では弱い面があることを最大限に考慮にいれて、これらの文化実践の調査・分析を進めていきたい。 また、研究対象の文化実践に対して個別の実証的調査研究報告にとどまらないで、本研究の大きな目標になっている、個別の文化実践の分析に基づいた「戦後日本の大衆文化の語られ方を批判的に検討し問題提起」するための基礎研究となるようにしたい。さらに本研究の成果として、今後の研究課題と理論構築のための仮説を提示するところまで、研究を発展させたい。 これらを高次元で達成するために、岐阜県東濃地区に直接に関わらない、すなわち間接的に関わるような文化実践、並びに社会事象についても、視野を広げることによって、多角的な分析が出来るようにしたいと考えている。たとえば、資料についても、これまでの文献、音源、映像等はもちろんのこと、写真、地図、議事録等も含めた豊富な資料分析を行っていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
おおむね、今年度と同様の方向である。 物品費については、一次資料を含む図書、資料類の購入にあてる。時代感覚をイメージするために、当時の音源や映像資料を入手する予定である。 旅費については、現地調査に関わる旅費のほか、他地区における文化実践についての現地調査に関わる旅費、研究対象地以外に居住する資料閲覧、提供者並びにインタビューに関わる旅費、似たような研究をしている方との研究に関わる情報提供、議論を行うための旅費、学会の大会、研究会に参加するための旅費、等を予定している。 人件費・謝金については、インタビューにご協力してくださった方からお借りしているものを含む一次資料の整理(主にコピー、スキャニング等によるデジタル化)に関わる人件費、インタビューを行った際の録音の活字おこしにかかわる謝金、等を予定している。 その他については、研究資料の運搬代、郵送料を予定している。
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