研究課題/領域番号 |
23653282
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
尾崎 久記 茨城大学, 教育学部, 教授 (40092514)
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研究分担者 |
竹野 英敏 広島工業大学, 情報学部, 教授 (80344828)
勝二 博亮 茨城大学, 教育学部, 准教授 (30302318)
大谷 忠 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (80314615)
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キーワード | 神経教育学 / 技能系教科 / 脳科学 |
研究概要 |
本研究は現代的教育課題の解決を図るために教育分野に脳科学的知見を活かした新たなカリキュラム開発を目指す挑戦的萌芽研究である。この研究では,技術科教育の「ものづくり」に注目し,技能系教科と脳科学の融合を試みるものである。平成23年度は,主に「運動技能系」に着目し,各種道具操作を行っている際の脳活動について検討した。さらに,道具操作の期待感と不安感に関する調査研究を行い,技能系教科へのモチベーションの低下が道具操作の不器用感を高めていくことが明らかとなった。 平成24年度においては,上記の研究を踏まえ,道具操作の適用学年の適切性を明らかにするための基礎的研究として,げんのうを用いたくぎ打ち操作の作業特性と不器用さとの関連を実験的に検証した。器用性の評価には厚生労働省による一般職業適性検査の差し込み検査を用いた。道具操作の作業特性評価にはげんのうを用いたくぎ打ち作業中の動作をビデオ撮影し,動作解析ソフトによる分析を行った。その結果,不器用であるほどひじを支点とした動きに対してひじの移動量における変動率が大きく,そのことがくぎ打ち動作の軌道を不安定にさせることが明らかとなった。 さらに,脳科学的研究においては,動作イメージ化に関わる脳領域を明らかにするため,近赤外線トポグラフィ装置を用いて,道具操作中とその操作をイメージしている際の脳活動を比較した。その結果,動作遂行中では動作の対側領域である左側頭領域において脳血流の増大が認められた。一方で,動作をイメージする他者動作観察場面では,動作遂行時に比べるとその活動はやや低いものの,左側頭領域での活性化がみられた。これらはミラーニューロンシステムとの関連が示唆され,近赤外線トポグラフィ装置でも動作イメージ時の脳活動を捉えうることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,技術科教育の「ものづくり」に注目し,これまで経験則の側面が強かったカリキュラム開発に脳科学との連携による新たな提言を行うことを志向している。平成24年度では,研究計画で「道具操作の適用学年の適切性に関わる調査」および「模範動作のイメージ化に関わる脳領域」を検討することとしていたが,研究実績で前述しているようにこれらの課題について一定の成果をあげることができた。したがって,研究の達成度としてはおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は研究最終年度となるため,これまでの研究成果について分析を進め,研究結果の公表に努めていく。研究のまとめを通して,今後も継続して研究を進めていく可能性が見いだせれば,次年度以降の研究費獲得に関して検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度においては,各研究分担者との日程の都合が合わずに,メール会議で対応した。繰り越した分については,最終年度である次年度では,これまでの研究成果のまとめと今後の課題について総括するため,主に研究分担者との研究討議や成果発表のための旅費として使用する予定である。
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