研究課題/領域番号 |
23653284
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
甲斐 雄一郎 筑波大学, 人間系, 教授 (70169374)
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研究分担者 |
井田 仁康 筑波大学, 人間系, 教授 (20203086)
上田 孝典 筑波大学, 人間系, 助教 (30453004)
長田 友紀 筑波大学, 人文社会系, 講師 (70360956)
唐木 清志 筑波大学, 人間系, 准教授 (40273156)
國分 麻里 筑波大学, 人間系, 助教 (10566003)
平田 諭治 筑波大学, 人間系, 准教授 (40311807)
手打 明敏 筑波大学, 人間系, 教授 (00137845)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 東アジア / 共同体意識 / 教育実践プログラム / 漢文教育 / 歴史教育 / 多文化教育 / 国際情報交流 / 台湾:韓国:中国 |
研究概要 |
本研究の目的は,日本を中心とする東アジアの国・地域(中国,韓国,台湾,日本)が協働して,東アジア共同体意識を高めるための教育実践プログラムを開発することにある。ここでいう「東アジア共同体」とは,さまざまなひと・もの・ことが交流し,新しい文化を創造するような,地域共同体を意味する。国家間の様々な利害関係が絡み合い,対立意識へと容易に変容してしまう事態が繰り返されている今日,教育学研究においては,東アジアの国・地域と協働して「東アジア共同体」教育実践プログラムを開発・実践することを目的とし、主として言語教育、歴史教育、生涯学習の領域で研究を進めた。 言語教育関連の領域では日本、韓国、台湾、中国の中学校における共通教材となっている「論語」に注目し、その教材採択の実態を明らかにするとともに、台湾、韓国における授業実践のあり方について実際に中学校を訪問して取材することができた。 歴史教育の領域では韓国の歴史教育を中心に検討した。具体的には、台湾や日本含めて東アジアで最も課題となる近代の歴史についての認識を探るための基礎作業を行なった。本年度は特に2012年4月より韓国の高校歴史選択科目『東アジア史』の授業実践が開始することに着目し、韓国の歴史教育に関する教育課程および教科書の分析を行なった。その結果、2009年改訂教育課程においては、それ以前と比べて韓国史の比重が多少下がるとともに、『東アジア史』教科書では中国や日本に関する未来志向の歴史叙述が増えたこと、生徒に考えさせる探求型の問いが教科書に増えたことをその特徴として挙げることができた。 生涯学習については、多文化教育をテーマにした講座を実施している公民館(類似施設を含む)について調査を行った。具体的には在日コリアンや中国帰国者などが多く居住していていることから多文化教育の蓄積が多く、また関心の高い川崎市や国立市などである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三つの分科会において以下のような成果が得られた。 言語教育領域においては、各国・地域における漢文教育実践の実態についてその概略をまとめることができた。歴史教育領域では主として韓国における歴史教育の改革内容を教科書分析を通じて明らかにすることができた。生涯学習については、多文化教育をテーマにした講座を実施している公民館(類似施設を含む)における学習内容を明らかにすることができた。 いずれの領域の成果も研究計画の次のステップに進む際の不可欠の内容である。ただし「東アジア」概念に関する分科会相互のコンセンサスは形成過程にあるため(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
「東アジア」概念をめぐる討議を重ね、言語教育領域、歴史教育領域、生涯学習領域に関わる各分科会におけるテーマに即して「東アジア」概念のアウトラインを設定する。その上で、各分科会では各国の研究者との共同作業を通して教材開発に向けたコンテンツ作成を行う。 言語教育領域では中国の漢文教育実践の状況を明らかにするとともに、台湾・韓国の研究者と学習者からみた漢文のあり方について問題を共有する。歴史教育領域では韓国に加えて台湾における東アジア史の可能性を探る。特に、台湾の近代史を中学校と高校の歴史教育課程の分析とともに、歴史教科書の分析を行なう。そこでの分析の軸は、日本や中国、韓国の描かれ方や、東アジアに関する歴史叙述と認識などである。生涯学習領域では公民館で実施している多文化教育講座のテキストなどを検証し、また急増するアジアからのニューカマーを対象とした学習を行っている地域についても調査を継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は大きく分けると二方向に集約する。 一つは図書関連である。これは東アジア共同体をめぐる研究の射程を明らかにするためのものと、教育実践プログラムを開発するための教材に相当するものである。 もう一つは旅費である。これは研究成果を発表・交流するための国内旅費と海外研究者との情報交換、また共同教材開発のための外国旅費である。とくに研究の性質上、相当数の外国出張が必要となる。また、付随して翻訳や通訳、そして情報提供に関わる謝金などが見込まれる。
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