研究課題/領域番号 |
23653286
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
吉川 一義 金沢大学, 学校教育系, 教授 (90345645)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 教員養成教育 / 解釈力 / 各教科の具体的思考 / 抽象的思考 |
研究概要 |
本研究は,物事を相対的に捉える力と考えられる「解釈力」の育成を中心に据えた教員養成のために必要な教育方法を提案し,その妥当性について実践的に検証することを目的とした.そのために次の3つの下位研究課題を設定した.研究課題1:本研究の核概念である「解釈力」を具体的にするために,小学校の教壇に立つベテラン教師(教師経験15年以上)と初任教員の特定授業に対するコメントを比較する.この結果を踏まえ,研究課題2では,教員に必要な「解釈力」育成の具体的カリキュラムを立案する.そして,研究課題3で,これを現役学生に対して実施してその妥当性を検証するものである. H23年度は,研究課題1に取り組んだ.解釈力を構成する要因の同定を目指した.基礎資料として,ビデオ収録した小学校のある授業をベテラン教員と初任教員が独立して視聴し,授業の進行に対する適時的コメントを収集した.これを基礎資料として,コメントの量的・質的分析を行った.結果,コメントの量的側面では,初任教員に対してベテラン教師のコメントは圧倒的に多い結果となった.そして,質的側面では,初任教員が授業の題材内容や発問,板書等の指導方法に関するコメントが多いのに対し,ベテラン教員は,児童生徒の発言内容や反応の様子に着目するコメントが多かった.これより,初任教員が「教えること」に重点を置くのに対し,ベテラン教員は,児童生徒の理解と指導方法を重視する傾向が示唆された.教育活動状況における「解釈力」を構成する要因には,題材内容に関する解釈,題材についての子どもの既有知識や判断の解釈,さらに,前2者を適合させるための指導方法の判断などが上げられた.これらの解釈判断について分析し,質的カテゴリー細分化する必要がある.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究1での対象者をベテラン教員と初任教員各15名としたが,いずれも教員であるため,勤務時間後に協力を得る必要がある.現場の教員は多忙であり,資料収集のための時間調整が容易ではなかった.このため,資料収集と分析に長期間を要した.結果,研究1を踏まえて具体的なカリキュラムを立案する研究2が遅れている.
|
今後の研究の推進方策 |
研究課題1で当初予定したベテラン教員群と初任教員群を15名から10名へと減じて資料収集することに変更する.また,現時点で収集し,分析できた各群6例ずつから得られた結果を基に研究課題2を進める.研究課題1も継続して進め,適宜蓄積された結果を加えながら,研究課題2を吟味する.研究課題3の実証過程を後期の6か月間に短縮して,妥当性を検証することとする.
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究課題1の不足する資料収集と結果の整理・分析に莫大な時間と労力を要した.これより,H24年度は,各教科領域を担当する連携研究者に資料収集・整理・分析の補助者を付け,研究進度の遅れを解消したい.このため資料整理・分析補助のための謝金を主として予定する. また,研究課題2と3のための資料収集として,教員養成系の他大学のカリキュラムについて,目指すべき教員像とカリキュラムの構造(カリキュラムマップ・ツリー等)と内容の系統性に関する資料収集を行う.併せて,研究課題1の結果についての意見交換と情報交換をおこなうための旅費を主として予定する.
|