研究課題/領域番号 |
23653290
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
近藤 孝弘 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (40242234)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 国際研究者交流 / ドイツ / 歴史教育 / 政治教育 / 学力 / 教科書 |
研究概要 |
本研究は,低学力の子どもに対して歴史教育はいかなる形をとることにより,その政治教育上の課題を果たすことができるのかについて,学力に応じた分岐型の学校体系を取るドイツの例をもとに考察することを目的としている。この目的を達するため,研究実施計画に基づき,平成23年度はゲオルク・エッカート国際教科書研究所附属教科書図書館(ドイツ・ブラウンシュヴァイク市)に1週間滞在して,教科書の調査を行なった。 具体的な研究手続きとしては,現地での時間的制約を考慮し,本年度はまず帰国後に購入して追加調査が可能な教科書を選定した上で,それらに対して内容分析を行いつつ,そこで得られた仮説・知見が,その他の教科書の記述分析から裏付けられるか否かを確認した。分析対象とする主な教科書の選定に際しては,同一の出版社から同一の著者が出版した教科書で,高学力者向けの版と低学力者向けの版の両方が揃っており,かつ相対的に多くの州で使用が認められているものとした。 分析の結果,学力差を念頭においた対応は,内容の違いよりも生徒に対する課題の与え方の違いにあるという暫定的な結論を得ることができた。すなわち,学力差はなによりも言語能力の差として捉えられていると推測され,教科書を見る限りでは,低学力者向けにおいては内容を厳選した上で,生徒が自らの力で課題に取り組む部分を減らし,代わりに予め平易な言葉で説明する部分を増やすという対応がなされている。 このことは,いわゆるリテラシーを中心とする学力重視の教育政策とは反対の方向性を示しており,近年のドイツの教育に対する理解に新たな側面を加えると同時に,日本の教育政策に対して批判的な評価を導く根拠となる可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に基づいてドイツのブラウンシュヴァイクで資料調査を実施し,また国内での追加調査も予定どおりに進めた。ブラウンシュヴァイクでの滞在時間が短かったことから,予定していた資料が入手できていない部分もあるが,予想以上のデータを得られた面もあり,総合的に見て概ね満足できる成果が得られたと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画のように,教科書資料については少なくとも1960年代にまでは遡り,教科書に加えて歴史教育学のテキストに反映された学力格差に関する教育観の展開を経時的に把握した上で,両者の見解を相互に照らしあわせることが直近の課題である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初計画のように,次年度もゲオルク・エッカート国際教科書研究所に赴いて調査を続けるほか,関連学会でこれまでの研究成果を報告し,他領域の研究者からの学術的なアドバイスを得ること予定している。
|